■キャリア断たれることを恐れ、セックスシーンやヌードも

 それでも女性は今年8月、検察に申し立てを行い、当局は今月、暴行罪でキム氏を罰金500万ウォン(約52万円)で略式起訴。しかし、セクハラなどその他の嫌疑に関しては、証拠不十分として不起訴処分とした。キム氏は、「演技のレッスン」が目的で女性に平手打ちしたことを認めたが、その他の行為については否定している。

 韓国では、映画撮影におけるヌードやセックスシーンについて詳細に明記された契約書が交わされることはまれで、そうしたシーンは現場で突然指示されることが多い。大半の女優は、「わがまま」「堅物」などのレッテルを貼られないように要求に従うことを余儀なくされる。

 エンターテインメント業界の暴力に関する報告を収集している人権団体「韓国ウイメンリンク(Korea Womenlink)」の活動家Youn Jeong-Joo氏は、こうした「キャリアの自殺」を恐れて、多くの女優が虐待を受けても沈黙を守ってきたと話す。

 記者会見を開いた女優は最近、インターネットで執拗(しつよう)ないじめを受けたと明かし、映画業界関係者の一部からも、世界的に有名な映画監督を「誹謗(ひぼう)中傷した」と攻撃されたと語った。

「でも私は自分の決断を後悔していません」。女性はそう断言し、こう話した。「この小さな一歩が今後、より多くの女性たちを勇気づけてくれることを、そしていつか韓国独自の『MeToo』運動が行われることを願っています」(c)AFP/Jung Ha-Won