【1月2日 AFP】暖色がふんだんに使われたインテリアとおもちゃが数多く用意されているイタリア・ミラノ(Milan)の保育施設「ビオバブ(Biobab)」は、一見すると特に変わったところはないように思える。だが、大きな違いが一つだけある。それは、この施設が刑務所内にあり、受刑者や刑務所スタッフ、そして近隣住民の子どもらを分け隔てなく受け入れていることだ。施設の関係スタッフは、この試みを「革新的な社会的実験の成功例」と評している。

 AFPの取材に応じたミラノ・ボッラーテ(Bollate)刑務所のマッシモ・パリシ(Massimo Parisi)所長によると、この保育施設はもともと、刑務所職員の福祉向上のために開設されたものだった。しかし当初は、利用することをちゅうちょする職員が大半で、ほとんど活用されることがなかったという。

 職員が利用しないため、施設は近隣住民にも開放されることになった。すると予想に反して、地元住民からは歓迎する声が上がった。

 パリシ所長は「大きな驚きだった。地元の人々らは肯定的に受け止め、子どもたちを施設に連れてきた。偏見を打ち破るという意味では、真の突破口となった。子どもたちを刑務所に連れて行くことは、やはり日常的にあることではないですから」と語った。

■壁を取り壊す

 地元の子どもたちの利用で、保育施設は職員らにとっても魅力的なものへと変わっていった。そして一昨年12月からは、女性収容者とその乳幼児のための新たな区画が開設・運営されるようにもなった。

 パリシ所長は「分け隔てなく遊ぶ子どもたちの姿を見ていると『統合』と『壁を壊す』という、当初からあった素晴らしいアイデアのようにすら思える」と語る。

 広い庭と遊び場を生かし、施設では専門家を招き入れて自然や動物たちと触れ合う活動にも取り組んでいる。地元利用者のある母親は、最初は息子を預けることにちゅうちょしたが、今ではそのような考えは消え、プロジェクトの意義をしっかりと理解したと話す。

 現場スタッフとして働くシモナ・ガーロ(Simona Gallo)さんも、この保育施設に子どもを預けているスタッフの一人だ。そばに子どもらを置いておけるので「心の平和」を保てるというのがその理由だ。

 ガーロさんは、「生い立ちや人生の経験が異なる子どもたちと一緒にすることは、豊かさをもたらす」としながら、収容者の子どもたち──何も悪いことをしていない子どもたち──が、こうした環境で過ごすことは大切だと指摘する。

 ミラノ郊外にあるボッラーテ刑務所では、収容者が従業員として働くレストラン「イン・ガレリア(In Gallera)」なども運営している。もちろん一般人も利用可能だ。ここでのこうした革新的な取り組みについては、地元でも広く知られている。