【12月17日 AFP】バチカン市国にあるバチカン美術館(Vatican Museum)が所蔵していた南米アマゾン(Amazon)の先住民シュアル(Shuar)の戦士の干し首が、およそ100年ぶりにエクアドル政府に返還された。

 この奇怪な干し首は1925年に宣教師がバチカンに持ち帰っていたもの。バチカン(ローマ法王庁)によると、数か月におよぶ交渉を経て、エクアドルのレニン・モレノ(Lenin Moreno)大統領がローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王を表敬訪問した際にモレノ大統領に引き渡された。世界最大級の美術品や考古資料を多数収蔵するバチカン美術館が歴史的な品を返還するのは異例。

 こぶし大ほどに縮んだ干し首は、これまで公開されたことはない。シュアルの人々が戦利品として敵の戦士をミイラ化したものとみられている。シュアルは民族の英雄をミイラにしていたが敵側の戦士も同様にして保存していた。

 シュアルは現在もアマゾン地域に存在する主要な民族集団の一つだ。近年では、シュアルが領有権を主張する土地でエクアドル政府の承認による大規模な鉱山開発が進行しており、シュアルの人々が抗議しているとニュースなどで報じられた。欧米では「ツァンツァ」と呼ばれる干し首の風習を持つ民族として知られてきた。

 干し首は、遺体の首を斬り落として頭骨を取り除いた頭部をゆで、目、鼻、口を縫い合わせて作られる。頭の内部にこもっている復讐心に満ちた敵の魂や長老の知恵が目や鼻や口から出ていかないようにするためだ。

 エクアドルに返還された干し首は、同国中部クエンカ(Cuenca)にある民俗学専門のプマプンゴ(Pumapungo)博物館に譲渡される予定だ。(c)AFP