■相次いだ記録更新

 2016年は世界の平均気温が過去最高値を更新し、近現代史上最も暑い年となった。この世界平均表面温度の記録更新は「実質的な100年スケールの人為的温暖化によってのみ可能」だったと、報告書は指摘している。

 アジア地域については、3月~5月にインドを襲い580人の犠牲者を出した大規模な熱波など「2016年における地域の猛暑は、気候変動がなければ起こり得なかったと考えられる」と記された。

 ベーリング海(Bering Sea)に隣接するアラスカ湾(Gulf of Alaska)やオーストラリア北部沖では、海水温度が人工衛星による観測記録が残る過去35年間で最高値となった。

 報告書では、この海水温の上昇で「世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)の大規模な白化現象とアラスカ沖で過去最大規模の有毒藻の大量発生」が引き起こされたことを指摘。「観測された異常事象が自然変動だけで発生したと考えるのはかなり難しい」とした。

 報告書ではさらに、2016年に亜北極帯で発生した「ブロブ」と呼ばれる暖水塊についても「人為的な気候温暖化なしでは説明がつかない」ことを明らかにしている。

 この他、2015年から2016年にかけて見られたような、アフリカ南部一帯を襲う激しい干ばつの発生件数が、人為的気候変動が主な原因で過去60年間に3倍に増えていることも説明された。また、2016年に中国・武漢(Wuhan)で発生した記録的豪雨のような異常降雨については、その発生確率を1961年当時のものと比較すると、現在の気候では約10倍上昇していることも明らかになった。

 ただ、報告書によると、すべての異常気象が地球温暖化の影響を受けているわけではない。

 ブラジル北東部で水不足を引き起こした干ばつなど、調査対象の異常気象事象の約20%は人為的気候変動との関連が認められなかった。

 今回の研究結果は、米ニューオーリンズ(New Orleans)で開催の米国地球物理学連合(American Geophysical Union)年次総会で発表された。(c)AFP/Kerry SHERIDAN