【12月14日 AFP】昨年急逝した米国の伝説的ポップミュージシャン、プリンス(Prince)さんが30年前に制作し、直後に廃棄するよう求めた「ブラック・アルバム(Black Album)」と呼ばれるアルバムのレコード盤が新たに数枚現存することが明らかになり、そのうちの1枚が13日、コレクターズサイトで売りに出された。同アルバムはコレクターの間で世界で最もレアなレコードの一つに数えられている。

「ブラック・アルバム」レコード盤の1枚が販売されているのは、プリンスさんが契約を結んでいたレコード会社ワーナー・ブラザース(Warner Brothers)の元重役ジェフ・ゴールド(Jeff Gold)氏が運営しているコレクターズサイト「レコードメッカ(Recordmecca)」。レコードは未開封で、価格は1万5000ドル(約170万円)だ。

 楽曲「パープルレイン(Purple Rain)」の大ヒット後、名声を欲しいままにしていたプリンスさんは1987年12月、それまで誰も試みたことのない方法で楽曲をリリースしようと考えた。それは、自身の名前を明記せず、何のデザインも加えられていないアルバムを何も伝えずに店舗に出荷することだった。

 プリンスさんとの確執が伝説にもなっているワーナーは当時、思いとどまらせようとしたが、最終的には譲歩し、同レコード盤の製造を命じた。このレコードにはタイトルは付けられていなかったが、何もデザインされていない黒っぽいジャケットにちなんで、非公式に「ブラック・アルバム」と呼ばれていた。

 しかしプリンスさんはその直後、このアルバムは「邪悪」であるとの啓示を受けたと主張し、製造されたレコードをすべて廃棄するよう要求。ワーナーは自社工場にあった50万枚以上の出荷を止め、大半を廃棄した。しかし、ワーナー時代にプリンスさんと仕事をしていたゴールド氏によると、最近になって別の元重役から同アルバムが5枚見つかったと連絡が入ったという。

 匿名希望の男性の元重役は、自身のコレクションを整理しているときに当時社内で配布された2通の封筒を発見し、その中に「ブラック・アルバム」が5枚入っているのを見つけた。そのうち3枚を売却することにし、そのうちの1枚が現在、ゴールド氏のサイトで売りに出されている。ゴールド氏はすでに別の1枚を直接売却しており、残りの1枚も後日商品リストに掲載する予定で、今後は鑑定書を添付するつもりだという。

 プリンスさんは1994年後半、「ブラック・アルバム」の限定版をリリースしたが、レコードではなくCDとカセットテープだったため、同レコードはコレクターの間で垂涎(すいぜん)の的となっている。

 プリンスさんは縛りの多いワーナーとの契約に憤り、1990年代、発音できないシンボルマークに改名したことでも知られたが、2014年にワーナーと和解していた。(c)AFP