【12月13日 AFP】北極圏では地球上のその他の地域に比べて2倍速いペースで気温が上昇しており、急速な温暖化が「新たな常態」となっていると指摘する国際科学調査報告書が12日、発表された。報告書は、北極の氷の融解がさまざまな環境変化を引き起こしており、世界的に影響を及ぼしていると警鐘を鳴らしている。

 米海洋大気局(NOAA)の年次報告書「北極圏報告カード(Arctic Report Card)」2017年度版は、北極圏で現在起きている「人類史上空前の変化」により、海面上昇が加速したり、異常気象事象の発生頻度が上昇したりするだろうとしながら、「一年中氷で覆われた地域だった数十年前の状態に戻る兆しは全く見えない」ことを説明した。

 世界12か国の科学者85人がまとめ、査読を経て発表された今回の報告書によると、対象期間(2016年10月から2017年9月まで)における冬季海氷面積は観測史上最低水準にまで減少し、また気温も現代において2番目に高い水準に達したという。

 報告書では「21世紀の海氷減少と海面温度上昇の程度とペースは、少なくとも過去1500年…おそらくこれよりはるかに長い期間において前例のない水準だ」と指摘され、また「北極の環境システムが『新たな常態』に到達したことを示し続けている強力な兆候が多数存在する」とも記された。

 NOAA報告書は、米ニューオーリンズ(New Orleans)で開催の米国地球物理学連合(American Geophysical Union)の年次総会で発表された。総会に出席したNOAAの「北極圏研究プログラム(Arctic Research Program)」を統括するジェレミー・マシス(Jeremy Mathis)氏は、このような温暖化の継続的な進行が招く結果は悲惨なものだと警鐘を鳴らす。

 マシス氏は、「北極圏で現在起きている変化は今後、北極圏内にはとどまるわけではない」「この変化は、われわれの暮らし全てに影響を及ぼす。すなわち今後、異常気象事象の増加、食品価格の上昇、気候変動難民の影響への対応などの問題を抱えて暮らすことを余儀なくされるだろう」と厳しい見通しについて語った。

 今回の報告書でも、北極の温暖化はすでに、ベーリング海(Bering Sea)東部の貴重な漁場を損わせ、永久凍土層の融解に起因する諸問題が道路、民家、インフラなどに影響し、そして高緯度地域での森林火災増加のリスクをもたらしていると説明されている。