■根底にあるのは貧困

 人口約100万人のゴマは湖と山にはさまれ、観光客にとっては絶好のロケーションだ。しかし近年は、ルワンダでのジェノサイド(大量虐殺)の後遺症に苦しんでいる他、2002年のニーラゴンゴ(Nyiragongo)火山の噴火やその10年後に起きた反政府武装勢力「M23(3月23日運動)」との衝突など、これまで幾度となく悲惨な出来事に見舞われてきた。反政府武装勢力同士の闘争も状況をさらに悪化させている。

 誘拐グループの犠牲となった計20家族の代理人を務めてきたという地元の著名弁護士ジャンポール・ルンブルンブ(Jean-Paul Lumbulumbu)氏は、これまでに子どもが殺害されるケースを数件担当したと話す。

 また、AFPの取材に応じたある警察筋は、ゴマで子どもが誘拐されるようになったのはここ1年のことだと述べ「私見ではあるが、厳しい経済的状況が人々をこうした犯罪行為に向かわせているだと思う。貧困が原因だ」と語気を強めた。

 身代金の受け取りにはSIMカードが使用されている。警察当局はこれを手掛かりに電話会社に犯人特定の協力を要請しているが、誘拐犯らは多数のSIMカードを使っているため追跡は容易ではないという。

 日没後、バレリーさん宅の大きなリビングルームは薄暗さを増したが、最後まで照明がともされることはなかった。おそらく節約のためなのだろう。部屋の片隅では、ナタナエル君のきょうだい3人が、スワヒリ語で話す母親の言葉に耳を傾けながら、携帯電話の明かりを頼りに遊びに興じていた。

 バレリーさんはAFPの取材に、ナタナエル君が再び学校に通い始めたものの、教師からは静養を勧められたことを明らかにした。

 そして「夜になると、息子は悪夢にうなされながら『アチャブ!』と大きな声を出す…目の前で殺された子どもの名前です」と話した。(c)AFP/Albert KAMBALE / Samir TOUNSI