■憂慮すべき観察結果

 研究では、先住民が仕掛けた網にかかったイッカク5頭にセンサーを取り付け、デンマーク領グリーンランド(Greenland)東海岸のスコアズビー湾(Scoresby Sound)に放し、それぞれの生理反応と行動反応を観察した。センサーは、米フィットビット(Fitbit)製の活動量計に似た記録デバイスを吸着カップを使ってイッカクに装着させた。

 数日後、イッカクの体から離れ落ちて海面に浮かび上がったセンサーを回収し、その記録内容を調べた。

 記録されていた内容を確認したウィリアムズ教授は、「この技術でイッカクの世界を知ることができるようになったが、観察結果そのものは憂慮すべき内容だった」と語った。

 イルカやアザラシなども深海を高速で泳ぐ際に心臓不整脈を頻繁に経験し、方向感覚喪失や死の危険に陥ることが、過去の研究では明らかになっている。

 イッカクは通常、シャチやその他の脅威を回避するための自然な逃避反応として、捕食動物が追跡できない領域へと、低速で下降または上昇して逃げ込む行動をとる。

 しかし、「シャチなどの捕食動物からの脅威とは異なり、超音波探知機や地震探査による不快音は回避が困難」であることをウィリアムズ教授は指摘しながら、「問題は、これに関してわれわれがどのように対処できるかだ」と続けた。(c)AFP