【12月8日 AFP】アルゼンチンの判事は7日、1994年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで発生し85人が死亡したユダヤ人センター爆破事件に絡み、イランの関与を隠した疑いでクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernandez de Kirchner)前大統領(64)の逮捕を命じた。司法筋が伝えた。

 クラウディオ・ボナディオ(Claudio Bonadio)判事は上院に前大統領から免責特権を剥奪する手続きの開始も要請した。これには上院で3分の2以上の賛成が必要となる。キルチネル氏は2007年から15年まで大統領を務め、現在は上院議員。ボナディオ判事はエクトル・ティメルマン(Hector Timerman)前外相ら複数のキルチネル政権幹部の逮捕も命じた。

 キルチネル前大統領はブエノスアイレスで記者会見を開き、ボナディオ判事の逮捕命令は「法の支配に反する行き過ぎた行為」だと激しく非難した。支持者からの喝采でしばしば中断された記者会見の中でキルチネル氏は、ボナディオ判事が主な容疑事実を「祖国に対する反逆」としたことは「アルゼンチン人の知性に対する侮辱」だと述べた。

 またキルチネル前大統領は「野党を迫害するため」に司法制度を「操っている」と中道右派のマウリシオ・マクリ(Mauricio Macri)大統領を非難した。キルチネル氏は以前から自身の法的問題は政治的動機に基づいたものだと主張している。

 キルチネル前大統領は2012年、イラン政府との間でユダヤ人センター「アルゼンチン・イスラエル相互協会(AMIA)」の爆破を命じたと疑われたイラン政府高官の捜査をアルゼンチンではなくイランで行うことと認める取り決めに署名した。ボナディオ判事はこれを、巨額の利益が上がるイランとの貿易と引き換えに事件へのイラン当局者の関与を隠すために仕組まれた犯罪の一部だと主張している。

 裁判所はこれまで証拠不十分として数回にわたってキルチネル前大統領らの訴追請求を退けてきたが、今年2月に改めて捜査が再開されていた。(c)AFP