【12月9日 CNS】中国・安徽省(Anhui)宣城(Xuancheng)に位置するヨウスコウワニ国家自然保護区内では、1万匹近いヨウスコウワニたちの「引越し」が始まった。ワニたちは現在の飼育池から越冬室へ移り、冬を過ごす。

 ヨウスコウワニは、中国固有の「国家1級保護野生動物」で、世界に現存する23種のワニの中でも特に絶滅の危機に瀕(ひん)しているワニだ。

 ワニの保護のため、中国では1979年、野外活動時に保護したヨウスコウワニに対して人工繁殖の研究を開始。ヨウスコウワニ国家自然保護区は、世界最大のヨウスコウワニ繁殖基地となった。人工繁殖により、年間で2000匹以上の稚ワニの繁殖能力を持つ。

 自然保護区管理局、汪仁平(Wang Renping)研究員によると、野生のヨウスコウワニは自然状況下で11月下旬に洞窟に入って冬眠、寒さをしのいでいるが、保護区内のワニは、人の手で室内に移動し越冬せざるを得ないという。

 「引越しチーム」は、捕獲員22人と車のドライバーで組織。「防護服」をまとった6人の捕獲員が慎重に水を抜き、2人1組で膝の深さまでの池に入り、特製の鉄フックを左右に動かしながら前に進んでいく。ワニの頭部が水面に上がっているのを見つけると、捕獲員は手でワニの口をしっかり抑え、勢いに乗じて自分の懐まで抱え込み、もう1人が両手でワニの身体を抱きかかえて水面から担ぎ出し、岸に揚げていく。ワニは低いうなり声を出しながら、力いっぱい尻尾を振って必死に抵抗する。

 捕獲員はワニたちを岸から車まで運び、1台で16匹ほどを運搬する。車の移送距離は数十メートル程度だが、運転手のほかにワニの護送担当の職員もおり、ワニが車から逃げたりけがをしたりするのを防ぐ。

 越冬室に運ばれる前に、ワニたちは集団で水浴びをする。さっぱりした後、各自の部屋に移動される。約2平方メートルの越冬室には、大型の場合は6匹で1部屋、小型なら8匹で1部屋に分けられ、8~10度の室温に調整された部屋で過ごすという。

 ヨウスコウワニ国家自然保護区によると、今年の引越しを予定しているヨウスコウワニの数は1万3200匹、そのうち5歳以下のワニが約7400匹、5歳以上が約5800匹。屋外70か所にある繁殖池から10日ほどの「引越し」期間を費し、40室ある越冬室で安全に冬眠してもらうことになる。(c)CNS/JCM/AFPBB News