【12月1日 AFP】国連食糧農業機関(FAO)は11月30日、メキシコ料理に欠かせない食材の一つ、ウチワサボテンが世界の食料危機の大部分を救う答えになり得るとの見解を示した。

 FAOは声明で「大半のサボテンは食べられないが、オプンティア属のサボテンには食べられるものがたくさんある。野生ではなく農作物として扱われているものは特にそうだ」と述べ、サボテン料理の可能性を追求する方法について解説した本も出版した。

 FAOと非営利団体「国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)」は、ウチワサボテンには人命を救う力があると考えており、2015年にマダガスカルを襲った干ばつでは「サボテンが現地の住民と家畜にとって決定的な食料・飼料・水分の供給源となったことが確認された」と強調している。

 サボテンは古代アステカ(Aztec)文明では聖なる植物とみなされ、現代でもメキシコの人々は食用、飲用から薬用、シャンプーにまで幅広く活用している。

 とげの生えた平たい形状が特徴的で、そこから突き出して生える赤い実がまるで指のようにも見えるウチワサボテンは、メキシコでは農園で大規模栽培され、一人当たりの消費量は年間6.4キロにもなる。

 また、地中海のシチリア(Sicily)島でもサボテンを食べるほか、ブラジルには総面積50万ヘクタールを超える飼料用サボテンのプランテーションもある。北アフリカやエチオピアでも植生が確認されている。

 消費価値に加え「乾燥した気候でも生育できるため、ウチワサボテンは食料安全保障の面で重要な存在となっている」とFAOは指摘。「果肉に水分を蓄えたサボテンは、井戸となる植物だ。1ヘクタール当たり最大180トンもの水を供給できる。成牛5頭が生き永らえるのに十分な量で、典型的な放牧地の生産力が著しく向上する」と説明している。

 また、サボテンは土壌の質も改善するため、オオムギのプランテーション栽培に貢献するほか、初期研究によれば温室効果ガスの排出削減にも効果があるという。(c)AFP