【11月28日 AFP】カナダに生息するネズミは気候変動に対応するために、体の変化と北方への移動を進行させているとの研究論文を27日、加マギル大学(McGill University)のチームが発表した。

 学術誌「エボリューショナリー・エコロジー(Evolutionary Ecology)」に掲載された論文について主執筆者のビルジニー・ミリアン(Virginie Millien)氏は、「暖冬傾向が強まることにより、カナダ・ケベック州南部に生息するネズミ2種に過去50年間で身体的な変化が生じた」ことを明らかにしていると述べ、「温暖化が野生動物を北に押し上げている」ことを示すさらなる証拠とした。

 研究チームは、北米大陸東部に広く生息する2種のネズミ、シカネズミとシロアシネズミを過去10年間にわたり調査した。

 論文によると、暖冬傾向が強まるにつれて、シロアシネズミは1年当たり約11キロのペースで北へ移動したという。

 モントリオールから東に約40キロのカナダ・セントローレンス渓谷(Saint Lawrence Valley)にあるモンサンティレール(Mont Saint-Hilaire)のゴールト自然保護区(Gault Nature Reserve)では、1970年代には捕獲されるネズミ種の90%がシカネズミで、シロアシネズミの割合は全体の10%にとどまっていた。

 しかし現在では、この個体数比が逆転している。北に向かってセントローレンス川(Saint Lawrence River)を渡るシロアシネズミが増えているためだ。

「気候温暖化に応じて形態変化が起きることが進化論で予測されているが、哺乳類ではこれに関する証拠がこれまでほとんど得られていなかった」と、ミリアン氏は説明する。

 また今回の研究では、1950年代までさかのぼるデータの比較から、どちらの種も頭蓋骨の形状が時間とともに変化したことが分かった。変化は、シロアシネズミの方がより顕著だった。

 さらに、臼歯の位置も変化していた。これは「気候変動に起因する餌の変化に加えて、2種のネズミの間で食糧資源をめぐる競争が発生したことに関連している可能性がある」と研究チームは推測。「かみ砕く必要がある餌の種類の変化を反映している可能性がある」とした。

「これらの変化は、それが遺伝子によるもので、未来の世代に受け継がれて実際の進化につながるものなのか、それとも一部の種に備わっている、環境の急速な変化に適応する能力の『可塑性』を示すものなのか」は、現時点では不明のままだと論文は結論づけている。

 いずれにしても、変化そのものは有意だ。ミリアン氏は「今回の研究で着目している骨や歯は、曲げるのが容易でない硬い構造体」であることを指摘している。(c)AFP