【11月24日 AFP】世界初のクローン羊「ドリー(Dolly)」は2003年、7回目の誕生日を迎える前に安楽死させられた。この時点でドリーは加齢に関連する変形性関節症を患っていたとされ、クローンで老化の進行が速まるのではとの懸念が高まった。

 だが、早期老化にクローンが関連しているとする懸念は見当違いとみられるとの研究結果が23日、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。実際に、ドリーの関節症は極めて一般的な疾患だった。

 英国のスコットランド(Scotland)とイングランド(England)の研究チームが導いたこの結論は、ドリーの骨のX線調査に基づいている。ドリーの骨格は、英エディンバラにあるスコットランド国立博物館(National Museum of Scotland)に収蔵されている。

 ドリーは膝が不自由だったが、その変形性関節症の程度は自然受胎で産まれた7~9歳の羊にとって「まれではない」ことが、今回のX線スキャンで明らかになった。

 研究チームは「クローン作製が原因でドリーが早発型の変形性関節症を発症したとする当初の懸念は事実無根だった」と結論づけ、今回の研究は「事実関係を明確にしたい」という願いに後押しされたと付け加えた。

 ドリーは進行性の肺疾患のため、6歳8か月で安楽死させられた。ドリーの品種であるフィン・ドーセット種の羊の寿命は通常約10~12年だ。

 ドリーの変形性関節症に関する公式記録は、科学会議に提出された論文の中の「短い言及」だけだと、研究チームは指摘している。元の診断記録や検査結果は何一つ保存されていない。

 同じ研究チームは昨年発表した論文で、ドリーと遺伝子的に同一な「姉妹」の羊4頭が9歳まで正常に老化しており、年齢的に珍しい関節症の症状はみられないことを報告している。

 動物のクローン作製は、農業分野で品種改良や繁殖のための家畜を作製するために主に活用されているほか、死んだペットを「再生する」ビジネスでも利用されている。(c)AFP/Mariëtte Le Roux