【11月23日 AFP】数十年にわたり100人以上の女子選手に性的暴行を加えたとして罪に問われている米国体操連盟(USA Gymnastics)の元チームドクター、ラリー・ナサール(Larry Nassar)被告が22日、ミシガン(Michigan)州の裁判所で罪を認めた。約30年にわたって同連盟に所属し、五輪4大会に帯同した同被告は、最低でも25年の禁錮刑を科される見込み。

 治療を装って選手に性的虐待を加え、22件の罪に問われたナサール被告は、司法取引で7件の性的暴行を認めた。被害者のうち3人は13歳以下で、残りは13歳から15歳の少女だったとしている。

 オレンジの囚人服を身にまとい、手錠をかけられて出廷したナサール被告は、時折大きなため息をつき、罪状認否では「イエス」とだけ答えた。その後、声明を読み上げた同被告は、1998年から2015年の間に起きた事件の被害者に対し「心からの謝罪」を伝え、「被害者ならびコミュニティーの傷が癒えることを望んでいる」と話した。

 ローズマリー・アキリーナ(Rosemarie Aquilina)裁判官は、ナサール被告と複数の被害者が姿を現した法廷で、被告の謝罪の言葉は極めて不十分であるとした。

「被告は信頼されるべき立場を、子どもを虐待するという最も卑劣な方法で利用した。今は癒やしが必要なときだという意見には同意するが、被害者は被告が刑務所で過ごしている間、生涯にわたって傷を癒やし続けることになる」

■「モンスター」

 これまでに五輪金メダリストのアレクサンドラ・レイズマン(Alexandra Raisman)、マッケイラ・マロニー(McKayla Maroney)さん、ガブリエル・ダグラス(Gabrielle Douglas)らがナサール被告から性的暴行を受けたと訴えており、レイズマンは同日、同被告は「医者ではなくモンスター」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 また、ナサール被告による性的暴行を初めて公にしたレイチェル・デンホランダー(Rachael Denhollander)さんは、法廷での被告の謝罪に疑いの目を向けている。

 この日の記者会見でデンホランダーさんは「彼は完全なナルシストです。完璧な詐欺師です」とコメントし、「ラリーの言葉に誠意はまったくなかったと考えています。それどころか彼がきょうしたことは、自分のいいところに再び目を向けさせたいという下心から生まれたものです」と続けた。

 検察によれば、ミシガン州立大学(Michigan State University)を拠点としていたナサール被告からの被害を訴え出た女性の数はこれまでに計125人に上る。そして被害者全員が司法取引に応じており、8件で起訴が取り下げられたという。

 すでに児童ポルノ所持でも罪を認めているナサール被告への判決は、来年1月12日に言い渡される予定となっており、被害者にはその場で発言する機会が与えられている。(c)AFP/Jeff KOWALSKY