【11月28日 東方新報】中国では近年、若者を中心にインターネットでの生中継が大流行している。中国インターネット情報センターのデータによると、2017年6月までで、生中継を放送するアカウントを持つ人は全国に3億4300万人おり、ネットユーザー全体の実に45.6%に上る。 

 中国のネット生中継は、視聴者が気に入ったパフォーマーに、現金に換金できる「バーチャルプレゼント」を贈ることができる。そうすることで自身の「肩書き」が「昇格」したり、ランキングに表示されたりと、「特権」を得られる。パフォーマーの関心をひくためや、見えのためにプレゼントを贈ることが多いようだ。

 北京(Beijing)のあるメディアの統計によると、この半年間に報道された「バーチャルプレゼント」が原因で起こったトラブルは28件で、金額は890万元(約1億5070万円)にも上るという。

 江蘇省(Jiangsu)徐州市(Xuzhou)に住む高校2年生の超超さん(16歳)は2017年6月ごろから、ある生中継の女性パフォーマーに「バーチャルプレゼント」を贈るようになった。

「バーチャルプレゼント」は、プラットフォーム上の通貨「猫円」で支払われる。超超さんが利用していた生中継プラットフォームでは、最高級のバーチャルプレゼントは9999「猫円」、現金に換算すると約999.9元(約1万6935円)。初めのうちは自分の口座から少額のプレゼントを贈っていたが、徐々にエスカレート。母親が家事をしている時など、携帯電話から目を離したすきに、母親のアリペイ(Alipay)アカウントから、金を少しずつ知り合いの口座に移しては「猫円」を買い、プレゼントを贈るようになっていった。銀行口座の取引を確認するために送られてくるメールも注意深く削除し、母親の目に触れないようにしていた。いつしか超超さんは、女性パフォーマーの「部屋」で、最も「地位」の高い視聴者となり、ほかの視聴者が中傷発言などした場合には発言を禁止できる権利を獲得。ほかの視聴者を管理し、女性パフォーマーを守る役目を果たすようになった。

 超超さんは、母親から金を盗み、プレゼントを贈り続ける生活がいつまで続くのかわからなかった。1か月を過ぎたころから、自分をコントロールできなくなっていることに気がついた。「怖かった、でも止め方がわからなかった」と当時を振り返る。

 女性パフォーマーの「部屋」で「ナンバー1」となった超超さんは、彼女の個人チャットの連絡先も教えてもらうことができた。2人はウィーチャット(WeChat)の音声チャットを通して話すようになった。女性が時折、超超さんを「宝宝(訳:坊や)」と呼ぶと、超超さんはしばらく舞い上がっていたという。

 しかし変化も、徐々に訪れた。超超さんがプレゼントを贈らなくなると、彼女の態度は徐々に冷たくなっていったという。

 2017年9月22日、その日は偶然、銀行システムのメンテナンスのために口座取引の確認メールが遅れて届いた。母親がメールを見たことで、3か月間、超超さんが母親の口座からこっそり金をくすねていたことがわかった。くすねた金額の合計は40万元(約677万円)。超超さんのしたことが両親にばれ、メディアにも取り上げられると、女性パフォーマーは超超さんの連絡先を削除した。「ブラックリストに入れられたとわかった瞬間、だまされていたのだとやっと気がついた」と後悔するのだった。

 中国青年政治学院インターネット法治研究センターの劉暁春(Liu Xiaochun)執行主任は、「インターネット上でのこうした行為は子どもが操作したのか、保護者が操作したのか証明できない。つまり、保護者が子どものアカウントを使用した可能性を完全には排除できない。生中継のプラットフォームは、それを見分ける能力もない。こういったプラットフォームに対して管理を強化すべきだが、保護者も自分の子どもを管理する必要がある。プラットフォームにだけすべての責任を押し付けることはできない」と話した。(c)東方新報/AFPBB News