【1月2日 AFP】パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)に新たに建設された計画都市ラワビ(Rawabi)。しゃれた大通りにショッピングモール、古代ローマ風の円形劇場もある。開発を手掛けた実業家のバッシャール・マスリ(Bashar al-Masri)氏(56)が、白紙の状態から数十年を費やしてようやく完成した都市だ。

 パレスチナ系米国人のマスリ氏は、ヨルダン川西岸で新都市を建設するという総工費14億ドル(約1570億円)のプロジェクトを立ち上げ、イスラエル政府や自らのコミュニティであるパレスチナ住民からの批判、政情不安など、目の前に立ちはだかる数々の障害を乗り越えてようやくラワビを完成させた。今後は、この街がパレスチナ国家建設に向けた道しるべとなることを願っているという。

 パレスチナ人によるパレスチナ自治区初の計画都市であるラワビの建設が始まったのは約10年前。ラワビとは、アラビア語で丘を意味する言葉だ。荒れ地だったラマラ(Ramallah)北郊の丘陵に、今ではベージュ色の真新しい高層住宅が立ち並んでいる。現在の入居者数はまだ3000人ほどだ。開発資金はカタール政府が援助している。

 現在も一部の工事は続いる。中には薄気味悪いほど閑散とした通りもあるが、最終的には4万人が暮らす街となる予定だ。ラワビのショッピングモールにあるカフェで取材に応じたマスリ氏は「毎月10万人以上のパレスチナ人がここを訪れ、驚いて帰る」と語る。

 ラワビは入念な都市計画に基づいて建設され、均一な建物が立ち並んでいるため、一部からはパレスチナ自治区の他の街よりも、パレスチナ人のほとんどが訪れることができないユダヤ人入植地に似ているという意見もある。また、ぜいたくな街の造りや高級な施設は富裕層だけを相手にしたもので、失業がまん延し貧困に苦しむパレスチナ自治区に不相応だと批判する声も少なくない。

 しかしマルシ氏は、そうした需要はあるし、プロジェクトが成功かどうかは最終的にパレスチナ人自身が決めることだと語り、「パレスチナ人にもより良い生活を送る資格はある。占領下で暮らしているからといって抑圧されなくてもいい」と続けた。