【11月20日 AFP】ドイツの4部リーグに今季から参戦して親善試合に臨むサッカーU-20中国代表が、独マインツ(Mainz)で行われたチーム初戦で、スタンドの観客がチベットの分離独立を支持する行動を取ったことに怒ってピッチを去り、試合続行を一時拒否する騒動があった。

 2020年の東京五輪出場を目指す中国は、4部リーグに相当するドイツの地域リーグ「レギオナルリーガ・ズゥートヴェスト(南西地域リーグ)」にU-20代表チームを実験的に参加させ、来年5月までに計16試合の親善試合を経験させる予定を立てている。

 ところがその最初の試合となった18日のTSVショットマインツ(TSV Schott Mainz)戦で、観客6人がチベットの旗を掲示したことに怒った中国の選手たちが試合続行を拒否し、試合が25分間にわたって中断する騒動が起こった。選手たちは旗をしまうことを条件に、ようやく試合の続行に同意した。

 旗を広げたのはチベット難民4人、ドイツ人2人からなる「チベット・イニシアチブ・ジャーマニー(Tibet-Initiative Germany)」というグループで、メンバーが独メディアに話したところによると「チベットに対する不当かつ暴力的な支配、そして基本的人権に対する抑圧に関心を持ってもらいたい」という理由で今回の行動に出たという。

 会場には400人以上の観客と5組のカメラクルー、25人の報道陣が集まっており、さらに試合は中国で生中継もされていたため、ドイツサッカー連盟(DFB)と中国チームは面目をつぶされた形になった。

 U-20中国代表の参戦実現に尽力したDFBのロニー・ツィマーマン(Ronny Zimmermann)副会長は「抗議を禁止することはできない。表現の自由は観客の権利で、一定の規則が適用されている。ゲストである中国の人々は落ち着いて対処し、こうしたことに過剰に反応してはならない」と語った一方で、「われわれも良きホストでなければならないし、それを考えれば今回の件は愉快な出来事ではない。われわれはサッカーを使ってゲストを意図的に挑発する行為を非難する」とも話している。

 抗議が暴力的なものではなかったため、警察が出動することはなかったが、対戦したショットマインツの監督は、中国チームの行動には困惑させられたと話し、「われわれは政治的なものだとは思わなかった。中国人が国旗を掲げるのを認められているように、ほかの人たちも同じ行為を認められている」と述べた。

 対して中国U-20代表の監督は、旗をめぐる騒動に関してコメントを避け、「われわれがドイツまで来たのは、チームとして成長し、経験を積むためだ。サッカーの話をしたかったが、今は別の件が話題になっている。私にとってこれは親善試合で、サッカー以外が話題になる状況は避けたかった」とコメントした。

 DFBのツィマーマン副会長は、次のFSVフランクフルト(FSV Frankfurt)戦では今回のような恥ずかしいことが起こらないよう「この件について中国の代表団と話し合い、もっと落ち着いて対処するよう勧めたい」と話している。

 中国年代別代表の独リーグ参戦は、2017年11月にアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)政権と中国の劉延東(Liu Yandong)国務院副総理が、5年間のサッカーにおけるパートナーシップを結んだことを受けて実現した。決定は国内で波紋を呼び、リーグに所属する19チーム中3チームがファンの抗議を受けて中国チームとの試合を拒否したが、対戦すれば1万5000ユーロ(約200万円)の助成金が出ることもあって、残り16チームは対戦に同意していた。

 年代別代表チームがドイツのリーグ戦の枠組に組み込まれ、クラブチームと対戦するのは今回が初めての試み。試合は中国U-23代表が0-3でTSVショットマインツに敗れた。(c)AFP/Ryland JAMES