【11月18日 AFP】サッカー中国スーパーリーグ(1部)でプレーする高額な外国人選手の中で、カルロス・テベス(Carlos Tevez)は間もなく中国を去ることになると言われている。しかし、W杯イヤーに中国から脱出したいそのほかの選手たちは、失望を味わうことになるかもしれない。中国では国外選手の獲得に多額の税金が課されることになったため、各クラブはすでに所属しているスターを絶対に逃がすまいとするはずだからだ。

 中国になじめず、あきれたファンから「重度のホームシック少年」とやゆされるテベスは、新天地での悲惨な11か月を経て、帰国の思いをちらつかせている。所属する上海申花(Shanghai Shenhua)は、推定週給73万ユーロ(約9650万円)という世界最高額を33歳のストライカーに支払っており、11月の中国FAカップ(CFA Cup)決勝が終われば退団を容認するとも言われている。

 しかし、そのほかの国外選手たちの撤退の望みは、シーズンが閉幕しようとしている今、かなう可能性は低い。なぜなら、代役の獲得に途方もない額の資金が必要になるからだ。中国サッカー協会(CFA)は5月、国外選手の獲得に実質100パーセントの税金を課す規則を施行し、これによって、驚くような金額で助っ人選手がやってくる流れはピタリと止まった。

 ファビオ・カンナヴァーロ(Fabio Cannavaro)氏の指揮官復帰が先日発表された広州恒大(Guangzhou Evergrande)も、2020年までに選手をすべて中国人で構成したいと宣言している。もっとも、その方針を貫いても絶対王者の地位を保てるかは、そのときになってみないとわからない。

 英国のスポーツマーケティング会社の幹部で、中国サッカーに詳しい人物は「テベスのような選手は出ていけると思うが、それは彼がいまいち使えないからだ。パウリーニョ(Jose Paulo Bezerra Maciel Junior 'Paulinho’)はFCバルセロナ(FC Barcelona)へ移籍したが、そのほかの主力選手、北京国安(Beijing Guoan)のレナト・アウグスト(Renato Soares de Oliveira Augusto)や申花のフレディ・グアリン(Fredy Guarin)は、今年に入って契約を延長している」と語った。

「今ではどのクラブも好きなようにお金を使うことはできない。国外選手という貴重な資産を手放さずに済むよう、各クラブは全力で慰留に努めるでしょう」

 スポーツビジネス関連ニュースの専門企業を北京で創業したマーク・ドレイヤー(Mark Dreyer)氏も、この意見に同調し、「これまでは多くのチームが外国人選手を入れかえてきました。たしかな理由があったからではなく、代理人や移籍ビジネスに関わる人間が介入してきたからです。長期的なクラブの安定を損なってきた。しかし今では、所属選手と契約を延長できれば、代わりの選手を取るのに100パーセントの税金を支払う必要はないのです」と述べている。

■中国脱出も「大きな賭け」と

 2018年夏に行われるW杯ロシア大会(2018 World Cup)が、状況をさらに不透明にしている。中国はW杯に出られないが、国内には出場国の出身で、本大会が始まる6月までに代表監督へアピールしたい選手が確実に存在する。しかし、スーパーリーグの新シーズンは春まで始まらないため、実力を示すのは簡単ではない。

 例えばテベスのチームメートで、コロンビア出身のジョバンニ・モレノ(Giovanni Moreno)には、W杯のメンバー入りのため帰国を検討しているとのうわさがある。しかし、クラブが攻撃的なポジションの人気選手を手放すかはまた別問題だ。

 先述のマーケティング会社幹部は、6000万ユーロ(約74億円)の移籍金で上海上港(Shanghai SIPG)に加入したオスカル(Oscar dos Santos Emboaba Junior)のような選手も、ブラジル代表復帰を目指してもっと有名なリーグへ戻りたいと思っても不思議ではないと話しつつ、こう警告する。

「しかしそれは大きな賭けです。なぜならオスカルは、そもそもチェルシー(Chelsea)に所属している途中にブラジル代表へ呼ばれなくなっている。それにレナト・アウグストや山東魯能(Shandong Luneng)のジウ(Carlos Gilberto Nascimento Silva 'Gil')は中国でプレーしていても代表に呼ばれている」

 昨年の冬の移籍市場で、過去最多となる外国人選手がスーパーリーグに参戦すると、CFAはすぐさま対策に動いた。その理由は、外国人選手の加入で中国人選手が締め出されるのを懸念したためだと言われている。そして実際、夏の移籍市場では課税が功を奏したのか、各クラブは支出を大幅に控えた。

 それでも、北京のとあるスポーツコンサルティング会社の社長は、今オフにはスーパーリーグの各クラブが札束攻勢を再開すると考えている。天津権健(Tianjin Quanjian FC)が期限付き移籍でドイツ・ブンデスリーガ1部のケルン(1. FC Cologne)からアントニー・モデスト(Anthony Modeste)を獲得したように、各クラブが規則の抜け道を見つけ出すというのだ。

 同社長は今夏に2億2200万ユーロ(約288億円)の移籍金でバルセロナからパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)へ加入したブラジル代表ネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)を引き合いに出し、「ネイマールのようなことが、この中国でも繰り返されるかもしれません」と語った。(c)AFP