【11月15日 AFP】太陽光を反射する粒子を成層圏に大量に放出することで、温暖化が進む地球を冷却する助けになる可能性があるが、その一方で、熱帯低気圧の強度に影響を及ぼす恐れもあるとする研究論文が14日、発表された。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された研究論文によると、反射性のエアロゾル(大気浮遊粒子状物質)を放出する範囲に応じて、北大西洋(North Atlantic)のハリケーンが弱まったり強まったりすることが考えられるという。

 さらに、人工的に地球温度を下げるこうした取り組みにより、北アフリカ・サハラ砂漠(Sahara Desert)南縁部サヘル(Sahel)地域では、深刻な干ばつが引き起こされる恐れもあると研究チームは警告している。同地域は気候変動による被害を既に受けている。

 2015年に採択され、世界196か国が参加する地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」は、世界気温の上昇を2度より「十分に低く」、可能であれば1.5度程度に抑えることを世界の国々に要求している。

 だが、温室効果ガス排出の削減による温暖化対策が遅々として進まないことから、一部の科学者らは人工的に気温上昇を抑える「応急策」を考え始めている。

「太陽光を対象にした地球工学は、地球温暖化の影響を弱めるための妥当な方策として、この10年間で急速に注目を集めている」と、論文執筆者らは指摘する。これは「太陽放射管理(SRM)」と呼ばれ、太陽光線の一部を強制的に宇宙空間にはね返し、地表に届かないようにすることで機能する。

 しかし、ある国が単独で一方的にSRM技術を展開することにより「他の国々に壊滅的な影響が及ぶ恐れがある」と、研究チームは警鐘を鳴らす。過去の研究では、太陽放射エネルギーを減少させることの潜在的な副作用として、局地的な降雨パターンの変化や季節風の乱れなどが生じることが指摘されていた。

 また、システムの停止と共に生じる「打ち切り効果」によって、突然の気温上昇が起きることも考えられる。