【11月11日 AFP】ポーランド政府が制作した「ウサギのように子どもを産もう」と国民に呼び掛ける啓発動画に、激しい批判の声が殺到している。

 敬虔(けいけん)なカトリック教徒の多いポーランドは欧州でも出生率が最低水準にあり、急激な人口減少に直面している。愛国主義的な理念を掲げる右派の与党「法と正義(PiS)」は2015年に政権の座に就いて以降、出生率を上げようとさまざまな対策を導入しており、問題の動画もその一環で作成されたものだ。

 30秒間の動画は、報道によれば保健省が270万ズロチ(約8400万円)をかけて制作した。十数匹のウサギが芝生の上を跳ね歩き、ニンジンやキャベツをむしゃむしゃ食べている映像にのせて、健康的な生活の促進と出生率の向上を国民に訴えている。サングラスをかけてあくびをするウサギや、逆さまに置かれたカクテルグラスの上から飛び降りるウサギも登場する。

「僕たちウサギは、子孫をたくさん増やす方法を幾つか知っている」と、ウサギの声を当てている男性ナレーターが語り始める。

「僕らの秘密を知りたい? まず第一に、ウサギはあちこち動き回る。第二に、よく食べる。第三に、ささいなことでくよくよしない。第四に、酒を飲んで騒いだりしない」とナレーションは説明。「だから、子どもが欲しいなら僕らを見習ってごらん。いいかげんなことを言っているわけじゃないよ。だって、僕の父さんには63匹も子どもがいるんだ!」と呼び掛けている。

 保健省はこの啓発動画を今年いっぱい公開する方針だが、「侮辱的」「幼稚」「無責任」などの不快感や批判の声が相次いでいる。医師で保健相を務めた経験のあるエバ・コパチ(Ewa Kopacz)前首相は、動画の制作にかかった費用について、PiS政権が昨年削減した体外受精の助成金に充てて不妊に悩むカップルを援助したほうが有益だったと非難した。

 国連(UN)の報告書「世界人口展望(World Population Prospects)」2017年版によると、現在3820万人のポーランドの人口は2050年には3240万人に減り、2100年には2120万人にまで減少する見通しだという。(c)AFP