■「爆弾を仕掛けた」

「何かあるたびに学校に『爆弾を仕掛けた』、『朝鮮高校生を何人か殺す』、このような電話、脅迫」などがあると慎校長は言う。「何か」というのは、北朝鮮に関する出来事がニュースで報じられるたびに、という意味だ。女子生徒は朝鮮学校の制服を着て登下校することができなくなった。

 北朝鮮はこの数か月だけでも2回日本上空を通過するミサイルを発射させ、その地域に住む住人を震撼(しんかん)させた。日本が北朝鮮の挑発行動の矢面に立たされている格好だ。

 日本を海へ「沈める」など、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)政権が挑発的な言動を繰り返す中で漂う緊張と不安は、多くの在日コリアン、特に生まれてから日本でしか生活したことのない若い世代にとって葛藤を抱かせるものとなっている。

 朝鮮学校の生徒のひとり、ファン・ソンウィさん(17)は「複雑な気持ち」でニュースを見ているという。双方からの報道について「どっちも信じてどっちも疑う」みたいな感じだと述べた。

 北朝鮮情勢によって在日コリアン社会に怒りが向けられるのは新しいことではない。拉致問題が決定的に世論を変えたと、東京を拠点に活動する弁護士の李春煕(リ・チュニ、Ri Chun-Hui)氏は言う。1970年代から80年代にかけて北朝鮮の工作員が日本から多くの民間人を拉致していたことが明らかになっている。

「かつて朝鮮民族は日本の植民地支配の被害者という存在だった。それが拉致問題によって、朝鮮が加害者で日本国が被害者であるというようなイメージばかりが増幅されるようになってしまった」と李弁護士は言う。「北朝鮮と名のつくものにはどんな攻撃をしてもいいという世論が広がっていった」