【11月10日 AFP】カナダ最西部ブリティッシュコロンビア(British Columbia)州の検視局は9日、同州でのオピオイド系鎮痛剤の過剰摂取による死者数が昨年に比べて2倍近くに増えていることを明らかにした。カナダでは、過剰摂取を防止するための協調的な取り組みが行われているが、今回のデータで問題解決の難しさが改めて浮き彫りとなった。

 カナダでは2016年、約2800人が鎮痛剤の過剰摂取で死亡している。その大半に強力な麻薬性鎮痛剤のフェンタニルが関係していた。問題が最も深刻なのは最西部ブリティッシュコロンビア州で、検視局は今年に入ってから9月までの期間に1103人の過剰摂取を確認したとしている。これは、昨年同時期の607人からの大幅な増加だ。

 検視局はまた、モルヒネの約100倍と強力な鎮痛作用を持つフェンタニルが、違法薬物過剰摂取の疑いがある死者の約83%から検出されたことを明らかにし、さらに過剰摂取による死者数とその増加率が最も顕著なのはバンクーバー(Vancouver)だとした。

 当局者によると、過剰摂取の件数は、所得扶助(生活保護)が支給された後の数日間に急増する傾向がみられるという。

 カナダ政府は2月、フェンタニル関連の過剰摂取死と薬の乱用を抑制する目的で、7500万カナダドル(約67億円)を投入し、緊急医療サービスを強化することを発表。フェンタニルとその前駆物質の輸入を厳重に取り締まるとともに、過剰摂取の治療に使用されるオピオイド拮抗薬「ナロキソン」のキット数千個の配布や、管理下での薬物注射を認める薬物使用施設の新規開設に対する法的な障害の撤廃などを行ってきた。

 薬物使用施設は最近まで、北米大陸ではバンクーバーにしかなかった。だが、保健当局は全国の都市に短期間で次々と新施設を開設し、各施設で注射器とナロキソンの提供などを行っている。

 カナダの首都オタワ(Ottawa)やトロント(Toronto)、その他いくつかの都市では、施設開設のための場所の確保が難しく、正式に認可されていない簡易施設20以上がそれぞれの都市公園内に設置されたテントで運営されている。(c)AFP