【11月13日 CNS】不動産の賃貸市場は中国国内の大手IT関連企業の新たな「戦場」になる。最近、アリババ(Alibaba)と京東(JD.com)が賃貸市場への参入を発表した。IT関連企業が新たな力を不動産賃貸業に注ぎ込むことで、中国の賃貸市場の新たな時代の到来となるだろう。

 IT関連企業の不動産賃貸市場への進出は、単なる一時的なブームによるものではなく、将来発展する潜在力を秘めている点が魅力的だからだ。

 易居研究院(E-House China R&D Institute)のアナリスト、厳躍進(Yan Yuejin)氏は、2027年までに中国は71億平方メートル規模におよぶ賃貸需要が見込まれるだけでなく、賃貸向け不動産資源が急速に発展することにつれて、10年後には住宅供給率が倍増するだろうと予測している。

「家とは住むためのものであって、不動産投資のためではない」。この位置付けのもと、中国は今まさに賃貸住宅のプラットフォーム構築を加速させている。その先駆けとして、広州市(Guangzhou)は10月に住宅賃貸情報サービスのプラットフォームを開設している。しかしまだ開設して間もないのと、資格審査の厳しさもあり、プラットフォームへの参加企業はいまだに少ない。現在までに登録しているのは15社のみで、個人や仲介者の所有する不動産資源も多いとはいえない。

 政府運営の住宅賃貸プラットフォームなどに比べると、アリババ傘下のプラットフォームはいくらか条件が緩和されており、実店舗を持たない業者であっても比較的簡単に登録できるようになっている。偽物件や悪徳仲介といった問題が発生することを防ぐために、アリババのプラットフォームでは取引の際、借主の信用情報と賃主の格付など厳しく管理しているが、この効果を確認するにはもう少し様子を見る必要がある。

 アリババ傘下のプラットフォームにもまだ課題があるにせよ、中国の住宅賃貸市場に影響を与えていることも確かだ。例えば、同グループ傘下のプラットフォームのひとつ「支払宝租房(アリペイ賃貸)」では、すでにオンラインによる賃貸管理や契約、オンライン支払を実現させており、一部の物件は「敷金免除」で入居できるようにもなっている。

 もう一方のIT関連大手、京東も、最近この住宅賃貸市場へ参入してきた。北京市住建委員会は10月20日、京東傘下の100%出資子会社が北京住宅賃貸管理プラットフォームの技術分野を監修すると発表している。京東はさらに今回の賃貸市場への参入のみならず、不動産販売市場へも進出する。京東不動産部門の曽伏虎(Zeng Fuhu)総経理は、「京東の不動産事業は単なるデべロッパーでもバイヤーでもない。サービスを提供する会社である」と述べている。

 中国eコマース研究センターの曹磊(Cao Lei)主任はCNSの取材に対し、二つの側面を指摘する。「1点目は、アリババ、京東などの大手IT関連企業の住宅賃貸市場への参入により、住宅賃貸市場全体の問題点が見えたことで、インターネットの運用によって課題に対する最適化やアップグレードを早急に進めていかなければならないこと。もう1点は、IT関連企業内の新規業務として展開するために、不動産物件も商品のひとつとして、オンラインビジネス化に進む傾向になるだろう」(c)CNS/JCM/AFPBB News