【11月12日 CNS】中国・上海市(Shanghai)初の重症新生児のための「母乳バンク」が7日、復旦大学(Fudan University)附属児科医院で発足した。優しい心を持ったお母さんたちから寄付された母乳は、入院中のために母親からの母乳が得られない重症新生児や未熟児の「初めての食事」になる。

 世界未熟児デー(World Prematurity Day、毎年11月7日)に合わせ、世界保健機関(WHO)が発表した資料によると、中国では毎年約180万人の未熟児が生まれ、世界2番目に多いという。

 同医院新生児集中治療室(NICU)の曹雲(Cao Yun)教授によると、低体重新生児や未熟児にとって、母乳は食料だけでなく、良い薬にもなる。

 しかし、すべての新生児がすぐに母乳を得られるとは限らない。曹教授によると、未熟児の母親は、生まれた子どもが未熟児だったり病気だったりすることによって緊張し、情緒不安定になりやすいため、母乳の分泌が少なくなってしまうという。

 また、中国では、病気で入院している新生児の多くが母乳を得られないという事情もある。曹教授によると、産婦が出産1か月以内に動いてはいけないという中国の「産じょく期」の風習もあって、母親が病院に足を運んで子どもに授乳することができない。

 復旦大学附属児科医院NICUには、生後28日以内の重症疾患の新生児が入院している。以前は、基本的に粉ミルクを飲ませてきたが、近年、医師たちの提唱で母親は母乳を病室に持参するようになり、1日に病院が受け取る量は合計で約15リットル、多い時は30リットルの母乳を受け取ることができるという。しかし、NICUに入院している新生児のおなかを8度の食事で満たすため、1日あたり少なくとも40リットルの母乳が必要だ。母親以外からの母乳の提供がない状態では、8度の食事すべてで母乳を飲める新生児は6割にとどまる。病院側の母乳在庫管理・運営面での課題もある。母親が病院まで来て授乳できないため、自宅で搾乳器で母乳を取り、家族が病院まで届ける。病院側で貯蔵・管理のうえ使用する。この過程では、厳格に一連の作業を行わなければならない。病気の新生児に対しては、さらに厳格な管理を必要とする。

 母乳バンクは、こうした状況に対応し、母乳の提供を受け入れるため設立された。 約1年の準備期間を経て、専門家の指導を参考にしながら、病院は制度、管理、操作や人員の配置など、充分な準備を行った。母乳の安全性を保証するため、医療従事者は母乳提供者ときめ細かいコミュニケーションをとる。情報収集を含め、母乳提供者の病歴、特に伝染病歴、食生活や生活スタイルなど、飲酒、喫煙、薬使用状況などを把握する。また、HIV、B、C型肝炎、梅毒やサイトメガロウイルスなどが陰性であることを示す検査報告書の提出を求めている。また、母乳提供者は本人と自分の赤ちゃんの健康状況、その出生日及び胎齢も報告しなければならない。

 病院側によると、これまでに、25人の寄付者から計200リットルの母乳を受けたという。

 今後、病気からの速い回復のために、外科手術を受ける新生児のためにも母乳を提供する計画があるそうだ。(c)CNS/JCM/AFPBB News