【11月13日 AFP】2015年11月13日にフランス・パリで発生し、130人が犠牲になった同時襲撃事件。現場の一つ、コンサートホール「バタクラン(Bataclan)」で遺体の下敷きなって死にかけたローラ・レベック(Laura Leveque)さん(32)は事件以来、肩に「130人の亡きがら」を背負っていると話す。

「だからしるしに残した方がいいと思って」。

 事件の生存者の中には、タトゥーを入れた人がたくさんいる。レベックさんもその一人だ。

「死体に埋もれた。死が体にしみ込んだ」と話すレベックさんは、事件から2年が経過した今も、「中ぶらりん」な気持ちのままだ。だが、タトゥーは「自分の体を取り戻し、恐怖を美しい何かに変える」助けになっているという。

 レベックさんの肩にはカラスのタトゥーと、その周りに日食、尾をくわえたヘビのタトゥーが刻まれている。自分の尾をくわえるヘビは「循環や生命」、「戦場に咲く花」を象徴する。

■体に傷を負わなかった犠牲者

「これは私の傷なの」。マノン・オートクール(Manon Hautecoeur)さんはライオンとパリ市の紋章にある標語「たゆたえども沈まず(Fluctuat nec mergitur)」と彫ったタトゥーを指して言う。この標語は事件後、事件に立ち向かうためのスローガンになった。

「傷ついたのが精神面『だけ』なら自分が犠牲者だとは感じない。体に傷を負っていないのだから」。カンボジア料理店「プティ・カンボージュ(Le Petit Cambodge)」が銃撃された際、現場近くにいたオートクールさんは言う。

「バタクラン」で生き残ったダビッド・フリッツ・ゲッピンガー(David Fritz Goeppinger)さん(25)も同じように感じているという。

「自分は傷を負っていない。何かが必要だったんだ」。ゲッピンゲンさんは、ローマ数字で事件日を彫った。