【11月2日 AFP】フランス中部にあるいつもはひっそりと静まり返っているこの町には9月初め以来、町周辺で地面に穴を開け、円柱状の岩石を掘り出している工業用掘削機の音が響きわたっている。

 その理由は、人口3800人の町ロシュシュアール(Rochechouart)とその中世の城が、隕石(いんせき)痕の上に築かれているからだ。

「星がつけた傷跡を意味する隕石痕は、大規模な隕石衝突によって残された跡のことだ」。そう説明するのは、宇宙地質学者のフェリペ・ランバート(Philippe Lambert)氏。同氏は隕石痕の謎の解明を試みている研究チームの一員だ。

 ロシュシュアールの隕石衝突孔(クレーター)は、2億年以上前に地表に激突した巨大隕石によって形成されたもので、19世紀に発見されて以来、科学者らの興味を引きつけている。

 有名なカナダ人天体物理学者のユベール・リーブズ(Hubert Reeves)氏は2011年、自身も立ち上げに携わった調査プロジェクトが進められているこの地を訪れ「極めて貴重な情報がわれわれの足の下にある」と熱く語った。

 それ以降、地質学者、古生物学者、宇宙生物学者などの世界十数か国の科学者から、隕石を詳細に調査するための申し込みが多数寄せられている。

 フランス国内で唯一知られているこの隕石痕を1977年に書いた博士論文で取り上げたランバート氏は現在、仏ロシュシュアール隕石痕研究国際センター(CIRRI)の所長を務めている。

 同センターは、この地で実施される史上初のボーリングと掘削調査を組織している。

 隕石痕周辺の自然保護区の監視を行っているピエール・プパール(Pierre Poupart)氏は「約2億年前、ジュラ紀より以前のまだ地球の大陸が分裂すらしていない時代に、直径約1キロ、重さ60億トンの隕石がここに激突した」と話す。「隕石は時速約7万2000キロの速度で飛来した」

 落下した隕石を蒸発させたほどの衝突の衝撃は、広島型原子爆弾数千個分に相当し、半径約200キロ以内の生物すべてをほぼ確実に死滅させ、地形を永久に変えてしまった。

 ロシュシュアール隕石痕は地表にかなり近い位置にあるため調査がしやすいとされている。ランバート氏は「今歩いているのは、隕石痕の上だ」「そこに到達するのに、土の層を掘削する必要すらない」と話す。