■名誉殺人の矛先は圧倒的に女性へ

「名誉」殺人のルーツは部族社会の規範にあり、今も南アジア一帯で広くみられ、特に女性の行動を支配し続けている。

 女性たちは縁談を断った、「間違った」男性と結婚した、友人の駆け落ちを手助けしたなどあらゆる理由で自分の家族に「恥」をもたらしたとして、射殺され、刺殺され、石で打たれ、火あぶりされ、首を絞められ、殺されている。男性も犠牲者となることはあるが、暴力の矛先は圧倒的に女性へ向く。

 名誉殺人の捜査を指揮するあるベテラン警官は匿名でAFPの取材に応じ、大抵のパキスタン人はレイプを犯した男は許すが、女性の場合は不倫を疑われただけでも家族に恥をかかせたとして、許されることがないと語った。むしろ名誉のために自分の妻や娘、姉妹を殺害する男性には、同情や称賛が集まるとさえ言う。

 弁護士で、女性の権利擁護団体「アウラ基金(Aurat Foundation)」で活動するベナジル・ジャトーイー(Benazir Jatoi)氏は、パキスタン社会は古い「名誉」の意味を越えることができていないと指摘する。「私たちが広く名誉殺人を非難するようにならない限り、誰も理解する者のいない時代遅れで独断的で家父長的な『名誉』の規範を女性たちが破ったと言って、彼女たちを殺して自慢する殺人者はいなくなりません」(c)AFP/Masroor GILANI