【10月31日 MODE PRESS WATCH】近代建築の名匠ル・コルビュジエ(Le Corbusier)の生誕130周年を記念して、コルビュジエが生涯で唯一、その才能を羨んだと言われる女性建築家アイリーン・グレイ(Eileen Gray)の人生を題材にしたドキュメンタリー映画「アイリーン・グレイ 孤高のデザイナー」が、Bunkamuraル・シネマにて公開された。

 本作では、百年の時を経てもなお時代の最先端を走り、各界に影響を与え続けるアイリーンの生い立ちから、亡くなるまでを残された当時の作品や関係者、研究家のインタビューを交え、そのヴェールに包まれた肖像を明らかにしていく。家具デザイナーとしても活躍したアイリーンは、妥協のないビジョンと冒険心を持ち、装飾、デザイン、建築の分野できらめく才能を発揮した。彼女の作品は、ル・コルビュジエのみならず、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、ジャック・ドゥセ(Jacques Doucet)など、多くのクリエイターを魅了。また女性の地位が低かった時代にパリに自身の店を持ち、バイセクシャルを公言した男装の麗人でもあった。枠に囚われることなく、志高く自由に生きた彼女は、死の直前に自身にまつわる多くの資料を処分したため、死後、彼女の名前は表舞台から徐々に消えていった。

(c)2015 MOJO ENTERTAINMENT LLC Authorised by The World Licence Holder Aram Designs Ltd., London.

 世界で最も長い歴史を誇る美術品オークションハウス「クリスティーズ」にて2009年に開催された「イヴ・サンローラン&ピエール・ベルジェ・コレクション 世紀のオークション」にて、彼女が手掛けた「竜の椅子(ドラゴン・チェア)」が当時史上最高額の約28億円で落札されて大きな話題となったことをきっかけに、彼女の名前は再び世間の注目されるようになった。今年、ル・コルビュジエの生誕130周年にあわせて公開された映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」では、ル・コルビュジエとアイリーンの二人の天才建築家が、惹かれながらも相克する愛憎劇を題材に美しい映像で描かれているほか、本作公開にあわせ、長らく絶版だった評伝「アイリーン・グレイ 建築家・デザイナー」が11月1日に復刊される。謎多きクリエイター、アイリーン・グレイに迫る話題の作品群を、芸術の秋にぜひ堪能してみてはいかが。

■作品概要
・映画「アイリーン・グレイ 孤高のデザイナー」(原題:Gray Matters)
監督:マルコ・オルシーニ
出演:メアリー・マクガキアン、ジェニファー・ゴフ
2015年、アイルランド、フランス語・英語、75分、カラー、シネスコ、ステレオ
公開:Bunkamura ル・シネマにて公開中

・評伝「アイリーン・グレイ」
発売:11月1日
出版社:みすず書房

■関連情報
・Bunkamura ル・シネマ 公式HP:www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/17_graymatters.html
(c)MODE PRESS