【10月28日 AFP】イタリアの裁判所は27日、10年近くにわたって無防備な性交渉によって故意に女性30人をHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染させた罪で、HIV陽性の男に禁錮24年を言い渡した。

 会計士のバレンティーノ・タッルート(Valentino Talluto)被告(33)は、ハーティ・スタイル(Hearty Style)という偽名を使い、ソーシャルメディア(SNS)や出会い系サイトなどで数十人の若い女性を口説いた。たいていの場合、同時に複数の女性と付き合っており、6股をかけたこともある。

 ローマ(Rome)の検察は終身刑を求めていたが、裁判所は約12時間にわたる審理の後、タッルート被告は病原菌をまん延させて流行病を引き起こしたことはなかったと判断し、禁錮24年を言い渡した。病原菌をまん延させて流行病を引き起こす行為はイタリア法では終身刑とされている。

 タッルート被告は自身がHIV陽性と判明した2006年から逮捕された2015年までの間に53人と性的関係を持ち、そのうち30人の女性をHIVに感染させたとされる。さらに、30人の女性のうち3人のそれぞれのパートナーの男性と、赤ちゃん1人もHIVに感染した。

 ローマのレビッビア(Rebibbia)拘置所の法廷で今年3月に始まった裁判で被害女性らは、タッルート被告にコンドームを着用するよう求めたが、被告はゴムアレルギーまたはHIV検査を受けたばかりだと言い張ったと証言した。

 弁護側は、タッルート被告は生まれてから一度も父親に会ったことがなく、4歳の時にHIV陽性で麻薬常習者だった母親とも死別したため愛情に飢えていたと主張し、同被告の振る舞いは「軽率だったが故意ではない」と主張した。

 タッルート被告の被害者の大半は学生だったが、中には子供がいる女性もいた。被害女性の年齢は、最年少が被告と交際を始めた時点で14歳、最年長は40歳前後だった。

 被害者は家族からさえ距離を置かれる病気の烙印(らくいん)から治療の苦しみまで、さまざまなHIVの恐怖を語った。

 しかしタッルート被告への思いを断ち切れない被害女性もいる。この女性は7月の公判で、2人が2014年に出会ったときタッルート被告はすぐにHIV陽性であることを告白し、自分はタッルート被告の浮気を許すと証言した。

 この女性は「私たちは結婚したいと思っています。私はまだバレンティーノを愛しています。彼はみんなが言うようなモンスターではないんです」と語った。(c)AFP/Fanny CARRIER