【10月27日 AFP】ローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王が26日、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の宇宙飛行士6人と映像中継で交信し、「宇宙における人間の存在」など哲学的な問答を行った。

 アルゼンチン出身のフランシスコ法王はバチカンの机の前に座り、大きなテレビの画面を通じて青い制服姿の宇宙飛行士らと対面。「こんにちは……いや、こんばんは、かな。宇宙ステーションでは時間の流れが違うと思うが、合っているだろうか?」と冗談を飛ばした。

「天文学は、われわれに宇宙の無限の境界について考えさせ、『われわれはどこから来て、どこへ行くのか?』といった疑問を抱かせる」と法王が口にすると、30秒のタイムラグ(時間のずれ)を挟んで米国人3人、ロシア人2人、イタリア人1人の宇宙飛行士らが人生最大の問題について考えをめぐらせる様子が画面に映った。

 イタリアのパオロ・ネスポリ(Paolo Nespoli)飛行士は、「われわれがここにいる目的は知識を広めるためだ。(しかし)学べば学ぶほど、無知を自覚させられる」と回答。さらに「あなたや神学者、哲学者、詩人、作家のような人々にこそ、宇宙に来て、宇宙における人間の存在意義を探求していただきたい」と語ると、法王はうなずいて笑顔を見せた。

 一方、ISS船長を務める米国のランディ・ブレスニク(Randy Bresnik)飛行士は、大気圏の薄さを目の当たりにして、地球に生きる命のはかなさを実感すると答えた。

 法王は重ねて、宇宙を動かす愛の力についてどう思うか、ISS滞在中の喜びの源泉は何か、無重力下での生活で世界の見方がどう変わったかなどについて質問。ブレスニク飛行士は「毎日外を見て、神の創造物を少しばかり神の目線から見ることが一番の喜びだ」と答え、戦争や飢餓、環境汚染、人間の愚行などから遠く離れた「ここから見るほうが、人類の未来は良く見える」と述べた。(c)AFP/Ella IDE