【10月25日 財新】中国で急成長を続けるネット保険業界の競争が激しさを増す中、国内有数のゲームおよびソーシャルメディア企業、テンセント(Tencent、騰訊)がこのほど、同社のメッセージアプリ「ウィーチャット(微信、WeChat)」やQQで保険商品を販売するための許可を新たに取得した。

 中国保険監督管理委員会(CIRC)は今月11日、テンセントが57.8%の株式を保有している微民保険代理(Weimin Insurance Agency)が営業免許を取得したことを発表。微民の株主には他に、台湾の富邦損害保険会社(Fubon Property & Casualty Insurance)や中国のプライベートエクイティファンドなどが名を連ねている。

 微民保険代理は2016年10月、資本金2億元(約34億円)で法人登記され、CIRCによると、今回の免許付与で保険商品の販売と保険料の徴収、支払い請求が可能となった。

 中国で最も使われているメッセージアプリ、ウィーチャットやQQのユーザーは合わせて9億人以上。これらのアプリにはいずれも、オンライン支払い機能が備わっているため、こうした巨大なプラットフォームによって、微民のネットによる金融ポートフォリオはたちまち急成長しそうだ。

 近年、IT関連企業は、フィンテック(金融テクノロジー)の波と、かつては国営企業によって独占されていた金融サービス部門の開放の流れに乗り、中国のネット保険業界にこぞって参入している。国内初のネット専業保険会社、衆安在線財産保険(Zhong An Online Property & Casualty Insurance)が先月、香港(Hong Kong)で新規株式公開(IPO)を行った際には応募超過が発生したことからも分かるように、この盛り上がりは一向に収まる兆しがない。

 経営コンサルティング会社、オリバー・ワイマン(Oliver Wyman)によると、中国では昨年、新規保険のうち約65%をネット販売によるものが占めていた。同社は、中国におけるネット保険業は2016年の3630億元(約6兆2000億円)から、2021年までには1兆4100億元(約24兆円)規模に成長するとみている。

 企業は、ハイリスク、ハイリターンのプラットホームの販売を優先する傾向があるという一部の市場関係者の見方に従えば、テンセントは衆案在線財産保険より微民に注力する可能性が高い。衆案に関しては、アントフィナンシャル・グループ(Ant Financial Services Group)と中国平安保険(Ping An Insurance)も株式を保有している。

 テンセントは、英国の保険会社アビバ(Aviva)香港法人の株式の20%と中国の和泰人寿保険(Hetai Life Insurance)の15%の株式を保有している。両社はネット保険市場におけるプレゼンス強化を見据えている。

 一方、アントフィナンシャルは、台湾の損害保険大手、国泰産険(Cathay Century Insurance)の株式51%を2016年に取得。以来、国泰産険は情報技術をビジネス発展のカギとなる原動力と位置付け、衆案のような大企業に真っ向から勝負を挑んでいる。(c)財新/JCM/AFPBB News