【10月20日 AFP】飼い犬は人の心の琴線に触れるために故意に「子犬のような目」をして飼い主を巧みに操っている可能性があるとする、多くの飼い主が長い間うすうす感じていた「策略」に関する研究結果が19日、発表された。

 英オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文によると、犬は意思疎通の手段として使うために顔の表情をコントロールしている可能性があるという。

 犬の表情はこれまで、自発的ではないものと考えられていた。だが、今回の最新研究は、人間の最良の友である犬が、しかめ面や歯をむき出しにした笑顔などによって飼い主から引き出される反応を十分理解していることを示唆している。

 論文の共同執筆者で、英ポーツマス大学(Portsmouth University)のジュリアン・カミンスキー(Juliane Kaminski)氏は「顔の表情は意思疎通を図ろうとする積極的な試みである可能性があることの証拠を、今回の研究結果は裏づけている」と話す。

 さまざまな種類の飼い犬を用いた一連の実験で、犬が人から注意を向けられている時により頻繁に「顔を動かす」ことを、研究チームは発見した。

 人の心をとろけさせる「子犬のような目」をするために眉毛を上げて目をより大きく見せるのが、最もよく使われる表情であることを研究チームは明らかにした。

 人が犬に背を向けていたり他に気を取られていたりすると、その間に犬がその人からご褒美の餌をもらえるかどうかに関係なく、犬の顔の動きがはるかに少なくなった。犬は人が自分にどれほど注意を向けているかを把握していることが、過去の研究でも示されている。

「犬は人が注意を向けている時により頻繁に顔の表情を作ることが、今回の研究で分かった」と、カミンスキー氏は話した。

 だが、人が考えたり感じたりしているであろう内容を犬が認識していると断定できる段階にはまだ至っていないと、研究チームは付け加えた。こうした認識状態は、人間が示す高い知性の表れと考えられている。

 ヒト以外の霊長類に関する研究では、霊長類の一部は、他者が自分の顔の表情を読み取ることができることを把握している可能性があることが示唆されている。霊長類は他者から見られていると表情が変わるという。(c)AFP