【10月18日 AFP】イラク軍が17日、係争地の北部キルクーク(Kirkuk)州内の油田をほぼ制圧したことで、独立を目指すクルド自治政府の希望は打ち砕かれる形となった。

 9月25日にクルド自治政府が独立の是非を問う住民投票を実施したことを受け、イラク軍および親政府派勢力はキルクークに進軍して知事庁舎や主要基地などを掌握。クルド人治安部隊ペシュメルガ(Peshmerga)の部隊は抵抗せずに撤退した。

 親政府派の部隊が進軍してくる中、クルド人の技術者らは16日夕方に油田の操業を停止して避難。AFPのカメラマンによれば、イラク軍は17日午前、バイハッサン(Bai Hassan)とアバナ(Havana)の原油施設の上に掲げられていたクルドの旗を降ろし、イラク国旗を掲揚した。

 クルド自治政府は中央政府の意向を無視して原油を輸出してきた。1日当たりの原油輸出量65万バレルのうち40万バレル以上がキルクークの油田で産出されたものだ。原油生産拠点をイラク軍に掌握されたことは、すでに財政難にあり、経済的自立を目指している同自治政府にとっては大打撃となる。

 キルクークでクルド人が今も掌握している最後の油田は、クルド自治区の中心都市アルビル(Arbil)南方のクルマラ(Khurmala)にあり、1日の産油量はおよそ1万バレルと規模は小さい。

 キルクークとクルド自治区からトルコ経由で輸出される原油は、クルド自治政府の財源の大部分を占めている。クルド人部隊がキルクークの多くの地域を掌握したのは2014年。この時期、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が勢力を拡大する中で、イラク軍は弱体化していた。

 フランスの地理学者でクルド問題専門家のシリル・ルーセル(Cyril Roussel)氏は、油田をイラク軍に掌握されたことでクルド自治政府の歳入は半減するとみている。

 クルド自治政府が実施した住民投票では独立賛成票が圧倒的多数を占めたが、ルーセル氏はキルクーク産の原油収入がなければ同自治政府が選挙結果を実行に移すことはないだろうと指摘している。(c)AFP/Ahmad al-Rubaye with Sammy Ketz in Baghdad