【10月17日 AFP】遠方の銀河で発生した超高密度の中性子星同士のすさまじい衝突を、世界で初めて観測に成功したとの研究結果がこのほど発表された。研究チームは、宇宙に存在する金の半分以上がこの種の衝突現象で作り出されたと結論づけている。

 興奮に沸く研究チームらは16日、世界各地で開かれた記者会見で、中性子星の衝突で放出された重力波と光(電磁波)が約1億3000万光年を旅して8月17日に地球の検出器で捕捉されたと発表。同時に多数の関連する科学論文が主要学術誌に掲載された。

 今回の現象の共同発見者で、フランス国立科学研究センター(CNRS)のブノワ・ムール(Benoit Mours)氏は、AFPの取材に「われわれは歴史が開く瞬間を目の前で目撃した。2個の中性子星が接近し、互いの周囲を高速で回転してついには衝突、破片をそこらじゅうにまき散らした」と語った。

 今回の画期的な観測は数多くの物理学の謎を解明するもので、科学界全体に興奮の波が押し寄せるかたちとなった。

 多くの人々にとって最も驚きだったのは、宇宙に存在する金、プラチナ、ウラン、水銀などの重い元素の大半がどこで生成されたかを、今回の観測データがついに明らかにしたことだ。

 共同発見者で、英カーディフ大学(Cardiff University)のパトリック・サットン(Patrick Sutton)氏は「あなたの結婚指輪に含まれる金は、太陽が生まれる50億年くらい前に銀河系内で発生した中性子星の合体で生成されたものである可能性が高い。歯の詰め物の中の水銀もだ」と話す。

 科学者らによると、「ビッグバン(Big Bang)」で出現した当時の宇宙は、最も軽い元素の水素とヘリウムで主に構成されていたが、後に恒星の内部で起きた核融合で鉄までの元素が生成されたという。

 鉄より重い元素については超新星爆発で生成されたとする説があるが、超新星爆発の発生頻度とそこで生成される物質の量では、宇宙に存在する重い元素の半分未満しか説明できない。

 重い元素の供給源に関するもう一つの説が、中性子星の合体だった。

 今回の研究では、中性子星合体で放射された電磁波バーストに、新たに合成された重い元素の痕跡が発見された。

 研究チームの一人で、米カリフォルニア工科大学(Caltech)のマンシ・カスリワル(Mansi Kasliwal)氏は「地球の質量の約1万倍に匹敵する量の重い元素を生成している宇宙鉱山の決定的証拠が初めて確認された」と述べている。