【10月17日 CNS】アリババが設立を発表した科学研究実験室「達摩院(DAMO)」。中国人の多くは、少林武術ゆかりの地を思い浮かべる。まさか、「掃地僧」と呼ばれる修道僧たちが、インテル(Intel)や、マイクロソフト(Microsoft)、IBMといった巨大なライバルたちを超越する手助けになるというのだろうか。

■武侠世界への憧れ 

 ジャック・マー会長を含むアリババの創業メンバーはみな、中国の人気作家、金庸(Jin Yong)氏の武侠小説の大ファンだ。

 2016年3月、金氏が92歳の誕生日を迎えた時には、マー会長はお祝いのコメントで「創業当時、メンバーの18人中16、7人は金庸小説の豊かな想像力、ロマンと義侠精神にあふれた世界の大ファンでした。特に男気あふれる義侠精神には深く影響を受けたので、アリババの企業文化にも深く根付いています」と話した。

 その言葉通り、2004年に唱えたアリババの六つの企業精神を、金氏の武侠小説『天竜八部(Tianlongbabu)』に出てくる、習得が難しいとされる技の名と同じ「六脈神剣(LiumaiShenjian)」と名付けた。また、社内のすべてのオフィスに「光明頂(Guangmingding)」「桃花島(Taohuadao)」「聚賢庄(Juxianzhuang)」「侠客島(Xiakedao)」など、金庸小説に登場する武術の聖地の名前が付けられている。

 さらによく知られているのが、アリババのニックネーム文化。社員はみな持っている。例えばマー会長は、金氏の武侠小説『笑傲江湖(Xiaoaojianghu)』の登場人物にちなみ「風清揚(Fengqingyang)」。張勇(Daniel Zhang)CEOは『天竜八部』から「逍遥子(Xiaoyaozi)」と名付けられた。

■「達摩院」の由来 

「達摩院」は、発表の2週間前にマー会長が名付けた。マー会長は、その時のことを「どうして必ず『研究院』だとか『実験室』と名付けなければならないのか。どうして自分で作った名前ではいけないのか? 中国語で『達摩院』、英語ではDamo。口に出していくうちにだんだん好きになるよ。『Yahoo』や『Google』だって、最初は変な名前だなって思ったでしょう?」と話した。

 少林武術における重要な聖地は数多くあるが、「達摩院」は聖地中の聖地だ。言い伝えによると、少林寺の「達摩院」はかつて菩提達磨(Bodhidharma)が修行し武術を磨いた場所とされている。

 アリババは「達摩院」と名付けた実験室が、武者の品格「侠之大者(訳:勇気を持って正しい行いをする者)、利国利民(訳:国家と国民のために)」を貫くことを願っている。