【10月16日 AFP】米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のサンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)に昨季まで在籍し、今や大きな論争を呼んでいる国歌演奏の際の膝つきを始めた選手として知られるコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が、リーグに対して苦情を訴えていることが複数メディアの報道で明らかになった。

 この件はCBSスポーツ(CBS Sports)や米スポーツ情報サイトのブリーチャー・レポート(Bleacher Report)、ESPNオンABC(ESPN on ABC)が取り上げ、キャパニックがNFLの選手協会(NFLPA)を通じて苦情を訴えるのではなく、法廷に持ち込んだと報じた。キャパニックは、過去にミュージシャンの故マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)さんやクリス・ブラウン(Chris Brown)さんらの弁護を担当したマーク・ゲラゴス(Mark Geragos)氏を雇ったという。

 キャパニック側は国歌演奏時の抗議を始めた自分を各チームのオーナーが共謀して雇わないようにしていると主張。29歳のキャパニックは、6シーズンを過ごしたフォーティナイナーズとの契約を打ち切ることを選び、3月で自由契約となったが、2013年にチームをスーパーボウル(Super Bowl)に導いたQBであるにもかかわらず、獲得に名乗り出る球団は現れなかった。

 ABCの報道によれば、苦情にはオーナーたちが「キャパニック氏がリーダーシップを取り、公平性と社会正義を支持したことの報復として、同氏の雇用される権利を共謀して奪った」と書かれている。

 CBCによると、キャパニックは非公開でのワークアウトを行う準備ができているという。純粋に選手として判断してほしいと考えており、その妨げになってはいけないとして、このところの抗議をめぐる騒ぎに対しては沈黙を守っている。

 NFLのロジャー・グッデル(Roger Goodell)コミッショナーは、リーグが意図的にキャパニックを締め出していることを否定しているが、このところ各チームにQBの負傷者が出る中でも、キャパニックは少なくとも表立ってはどこのチームのトライアウトも受けていない。

 キャパニックはNFL通算69試合に出場し、60パーセント近いパス成功率を記録している。通算獲得ヤードは1万2271ヤードで、タッチダウンパスは72本、インターセプトは30回となっている。

 NFL選手の抗議をめぐっては、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が膝をつく選手は「くそ野郎」でクビにすべきだと発言したのをきっかけに、数多くの選手が膝をつき、腕を組み合わせて団結の意志を示すパフォーマンスが過去4週間続き、緊張が高まっている。

 前週のインディアナポリス・コルツ(Indianapolis Colts)とサンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)の試合では、フォーティナイナーズの選手のうち20人あまりが膝をつくのを見たマイク・ペンス(Mike Pence)米副大統領が、観戦を中断して退席。トランプ大統領がのちにその行動をたたえるという出来事もあった。

 こうした状況を受けて、次週予定されている定例オーナー会議の場では、選手協会とリーグ上層部、そしてオーナー陣が踏み込んだ話し合いを行うことが予定されている。(c)AFP