【10月10日 AFP】「運動した後の靴下にテレピン油とタマネギを詰め込んだ」ようなにおいがするといわれる東南アジア産の果物ドリアンに無反応な人はいない。大好きになるか大嫌いになるかのどちらかだ。

 とげで覆われ独特なにおいを放つ珍味のドリアンは、タイ、マレーシア、インドネシアなどの国々で人気が高い。しかし、そのにおいを理由に公共交通機関や多くのホテルでは持ち込みが禁止されている。

 このように物議を醸すことの多いドリアンだが、その遺伝子構成に関してはこれまでほとんど分かっていなかった。

 シンガポール、香港、マレーシアの科学者チームは9日、ドリアンの一般的な品種である「Durio zibethinus」の「DNAの設計図」を発表し、その比類のない特性に関与する遺伝子を明らかにした。

 こうしたデータは「ドリアン種の多様性に関する理解の向上に不可欠だ」と、研究チームは米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)に発表した論文に記している。

 あのにおいを二度と嗅ぎたくないと思っている人はいるだろう。しかし、ドリアン数種をめぐっては絶滅の危機にあるとの懸念が持ち上がっており、DNAに関する知識を深めることは保護活動の助けにつながる可能性がある。

 ドリアンのDurio属は30品種知られており、中でもzibethinusが世界で最も広く消費されている。

 果実は黄緑色で、とげに覆われており、ラグビーボールくらいの大きさにまで成長する。

 論文によると、2008年のドリアンの栽培面積は25万ヘクタール以上で、これはルクセンブルクの国土面積にほぼ匹敵する広さだという。また「ドリアンは最近になって中国市場に浸透してきているため、大きな経済的価値を有している」ことも記された。

 ドリアンのゲノム(全遺伝情報)データは、人気の高い品種として販売されている果実が本当にその品種かどうかを確認する「迅速な品質管理」に役立つ可能性もあると、研究チームは指摘している。人気のある品種は、熱烈な愛好者らの間で高値になる可能性があるという。

「さらに研究を進めることが、この重要で魅力的な熱帯植物の生態学的役割を解明する一助となるに違いない」と、研究チームは記している。(c)AFP