【10月6日 AFP】世界中の蜂蜜の75%から、ミツバチに神経ガスとして作用する殺虫剤の痕跡が見つかり、作物の重要な花粉媒介者であるミツバチの生存に対する懸念が高まっている。研究者らが5日、明らかにした。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された研究論文によると、世界中から集められた198種類の蜂蜜試料で検出された濃度は、欧州連合(EU)が定める人間の食用とする際の残留基準値を下回っており、人体の健康への影響はなさそうだ。

 だが、蜂蜜試料の34%がミツバチにとって「有害なネオニコチノイドの濃度」で汚染されており、慢性暴露はハチの生存に脅威だと研究論文は指摘している。

 ミツバチは世界の主要穀物の90%の授粉を支えているが、近年はダニや殺虫剤、ウィルス、菌、またはこれらの組み合わせが原因とされる謎の「蜂群崩壊症候群」で死んでいる。

 研究対象となった欧州の蜂蜜は、2013年のEUによるネオニコチノイドの一部規制前に採取されたもので、規制の効果を調べるにはさらなる研究が必要とされている。

 ミツバチは植物の花蜜を集めながら授粉し、時間をかけてこの甘い液体が蓄積され濃い蜂蜜ができる。

 汚染レベルを検査するために世界中の生産者から蜂蜜の試料が取り寄せられた。スイスのヌーシャテル大学(University of Neuchatel)のエドワード・ミッチェル(Edward Mitchell)氏が率いる研究チームは、一般的に使用されている5種類のネオニコチノイドの検査を実施した。「蜂蜜試料全体の75%は少なくとも1つのネオニコチノイドを含んでいた」という。

 蜂蜜の汚染の割合を地域別で見ると、北米が最も高く86%、次がアジアの80%、欧州の79%となっている。最も濃度が低いのは南米の57%だった。

 研究論文は「世界の花粉媒介者のかなりの部分がネオニコチノイドの影響を受けていることを、この結果は示している」と指摘した。

 国連(UN)は昨年、ミツバチやチョウを主とする花粉を媒介する無脊椎動物の40%が、全世界で絶滅する恐れがあると警告している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN