【10月5日 AFP】欧州医薬品庁(EMA)が2009~2013年に認可したがん治療新薬で、効果が立証されておらず、患者が不必要に毒性にさらされた可能性のあるものが39あったとする研究論文が5日、発表された。

 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に論文を掲載した公衆衛生の研究チームは、39という数は、欧州で同期間にがんの治療薬68種のうちの半数以上が患者にとって入手可能になったことを示しており、「薬剤規制の現行の基準について深刻な問題が生じている」と主張。高価なことが多いがん治療薬をEMAが認可していることにも懸念を示した。

 研究チームは、「臨床的にみて意義のある効果を欠いた高価な薬剤が認可され、公的資金による医療制度内で購入されると、個々の患者に害が及び、大切な社会的資源が浪費され、公平で経済的な負担の少ない治療の提供がおろそかになる可能性がある」と指摘している。

 こうした薬剤の多くは、患者に対して実際に効果があるかどうか予測できるまでには至らない初期段階の不十分な臨床試験結果に基づいて認可されていた。

 2015年に発表された別の論文では、2008~2012年の間に米食品医薬品局(FDA)によって認可されたがん治療薬の大半が、同じく患者の生存率の向上や生活の質の改善が証明されないまま認可されていたことが明らかになった。

 論文の執筆者の1人、米オレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University)のビナイ・プラサド(Vinay Prasad)氏は、米国の平均的ながん治療薬は、患者1人当たり年間10万ドル(約1100万円)以上かかると指摘。

 がん治療薬の有毒性や高価格であることを考慮すれば、患者には「延命や生活の質の向上が合理的に期待できるとき」のみにこうした薬剤を使用すべきと語っている。(c)AFP