【9月30日 AFP】韓国の五輪組織委員会(POCOG)は29日、来年の平昌冬季五輪が「平和な祭典(Peace Games)」になるための重要な要素として、世界から孤立している北朝鮮の参加を模索するなか、フィギュアスケートの同国ペアが五輪出場枠を獲得したことを「特別に」歓迎すると強調した。

 POCOGは声明で「北朝鮮の選手が韓国・平昌(Pyeongchang)で開催される冬季五輪の出場権を獲得したことに、われわれは大変喜んでいる。北朝鮮の参加により、平昌五輪はスポーツ界最大の祭典となり、この特別な瞬間を分かち合う選手全員を歓迎する」とコメントしている。

 独オーベルストドルフ(Oberstdorf)で29日に行われたネーベルホルン杯2017(Nebelhorn Trophy 2017)で、北朝鮮の廉太鈺(Ryom Tae-Ok、リョム・テオク)/金柱希(Kim Ju-Sik、キム・ジュシク)組は平昌五輪のペア出場枠を獲得。これで北朝鮮はワイルドカード(特別参加枠)を与えられるのを待たずに同五輪への参加が可能となるが、政府は選手団の派遣を正式には決定していない。

 北朝鮮がミサイル発射と核実験を繰り返し、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長とドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が激しい舌戦を繰り広げて緊迫感を高めているなか、軍事境界線から80キロメートルしか離れていない平昌で五輪が開催されることについて、国際社会では不安が増大している。

 一部の国では、こうした情勢不安が続けば大会を見送ることを示唆しているのに対し、POCOGは大会期間中の「完璧な安全」に自信をみせており、韓国の首都ソウル(Seoul)では北朝鮮の参加が緊張緩和への象徴的な動きとなり、「平和な五輪」として大会を盛り上げることが期待されている。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-In)大統領は今年7月、孤立を深めて貧困にあえぐ隣国の参加が地域と世界の平和につながるとして、国際オリンピック委員会(IOC)に協力を要請。さらに北朝鮮を参加させる方法としては、これまでにアイスホッケーなどの競技で韓国選手と一緒にプレーする南北合同チームを形成する案が出ていた。

 北朝鮮は1988年のソウル五輪をボイコットしているものの、IOCメンバーの張雄(チャン・ウン、Chang Ung)氏は今月上旬、同国の五輪委員会が選手の参加を容認する意向を示し、「政治と五輪は別の問題だと確信している。平昌五輪への参加については、特に大きな問題は見受けられない」と述べている。

 韓国と核武装を進める北朝鮮は、世界で最も緊迫した軍事境界線で南北に分断されている。両国による朝鮮戦争は平和条約に至っておらず、厳密にいえば休戦協定が結ばれた1953年以降も継続している状態となっている。(c)AFP