【9月30日 AFP】フィギュアスケートのネーベルホルン杯2017(Nebelhorn Trophy 2017)は29日、ドイツ・オーベルストドルフ(Oberstdorf)で行われ、北朝鮮の廉太鈺(Ryom Tae-Ok、リョム・テオク)/金柱希(Kim Ju-Sik、キム・ジュシク)組が平昌冬季五輪のペア出場枠を獲得し、核をめぐる情勢不安が続くなかで「平和の祭典(Peace Games)」に向けて大きな一歩を踏み出した。

 スパンコールがあしらわれた黒いコスチュームに身を包んだ18歳の廉と25歳の金は、フリースケーティング(FS) で力強い演技を披露し、ペアの五輪出場5枠のうち1つを獲得した。来年2月に韓国との軍事境界線に程近い平昌(Pyeongchang)で開催される冬季五輪への出場を熱望していた北朝鮮ペアは、ワイルドカード(特別参加枠)を与えられるのを待たずに出場できることになった。

 核武装を進める北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返し、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長とドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が激しい舌戦を繰り広げるなか、平昌五輪への不安が高まっていた。

 しかし、独アルプス山脈で開催された今大会は、地理的にも一連の政治問題とはかけ離れた雰囲気に包まれており、北朝鮮ペアはジャンプに小さなミスはあったものの、ジネット・リノ(Ginette Reno)が歌う「Je ne suis qu'une chanson」の曲に乗せて流れるような滑りを披露。金は「自分たちの演技にとても満足していたので、最後はすごく気持ちがこみ上げた。コーチ陣に心から感謝しています」とコメントした。

 スコアが発表される際、北朝鮮の赤と白、そして青のジャケットを着用していた廉と金は、その時点で2位となる合計180.09点を獲得すると、互いに緊張した表情を浮かべた。最終的には6位だったものの、優勝したロシアのエフゲニア・タラソワ(Evgenia Tarasova)/ウラジーミル・モロゾフ(Vladimir Morozov)組はすでに五輪出場枠を獲得しており、出場枠圏内に入るには十分な順位となった。

■南北合同チーム

 北朝鮮の平昌五輪への参加を実現させるために、韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-In)大統領が国際オリンピック委員会(IOC)へ協力を求めていたなか、今回のニュースは南北両国にとって歓迎すべきニュースになるとみられる。

 1988年のソウル五輪をボイコットしている北朝鮮を参加させる方法としては、これまでにアイスホッケーなどの競技で韓国選手と一緒にプレーする南北合同チームを形成する案が出ていた。

 トランプ大統領が北朝鮮を「完全に破壊する」と過激な発言をしたのに対し、金委員長は「精神的に錯乱している」と同大統領を個人的に攻撃すると同時に、発言への代償を支払わせると警告。25日には北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ、Ri Yong-ho)外相が、トランプ大統領の発言は宣戦布告に等しいと反発した。

 しかし、平昌五輪を控え、韓国の五輪組織委員会(POCOG)会長を務める李熙範(イ・ヒボム、Lee Hee-beom)氏は先日、開催地を変更する「プランB」はないと話し、核をめぐる緊張感が高まっているなかで大会期間中の「完璧な安全」に自信を示した。

 2002年サッカーW杯日韓大会など、韓国ではこれまで何度もスポーツの国際大会が開催されているが、厳密にいえば朝鮮戦争は終わっておらず、数十年にわたる軍事的緊張が続いている。1988年ソウル五輪の数か月前には、海外からの観客や選手団を脅す目的で、北朝鮮の工作員が大韓航空機爆発事件を起こして115人が犠牲となっている。(c)AFP