【9月28日 AFP】ミャンマー西部のヒンズー教徒の村に住むリカ・ダール(Rika Dhar)さん(25)は、夫と2人のきょうだい、その他大勢の近隣住民が村に突然現れた覆面姿の男たちに無理やり丘陵地帯まで連れて行かれ、なたでめった切りにされて殺害される様子を目撃した。

 現在、バングラデシュ国内のヒンズー教徒収容キャンプに2人の子どもと身を寄せているダールさんは、「殺した後に男たちは大きな穴を3つ掘り、その中に遺体を投げ込みました。殺された人たちは後ろ手に縛られ、目隠しをされていました」と語った。

 複数の目撃者がAFPに語ったところによると、虐殺が起きたのは、ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州北部にあるヒンズー教徒が住む小さな村の外れだ。ミャンマー当局は同地で多数の遺体が埋められている集団墓地を発見し、24日以降、掘り出された遺体の数は45人に上っている。

 ミャンマー軍は、これらの凄惨(せいさん)な遺体は、イスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)の武装集団が8月25日に行った虐殺の証拠だと主張。同日には、同武装集団が駐在所などの警察施設を計画的に襲撃し、それをきっかけに異教徒間の虐殺が一気に拡大したとされている。

 一方、事件から約1か月が経過した27日、ロヒンギャの武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」はツイッター(Twitter)で初の公式声明を発表し、同組織がヒンズー教徒の村民を大量虐殺したとするミャンマー軍の主張を真っ向から否定。同組織のメンバーらが「殺人、性的暴力、強制的な人員補充を行った」とされていることについて「全面的に否定」するとした上で、ミャンマー軍に対して「(ロヒンギャをめぐる現在の状況は)自業自得」だと非難するのはやめてほしいと訴えた。

 ARSAが声明を発表した同日、ミャンマー軍は多数の女性や子どもを含むヒンズー教徒が埋められていた集団墓地が見つかったラカイン州北部に報道関係者を空輸するため、紛争地帯の厳重な包囲網を解除した。現場では今週初めから掘り起こし作業が行われており、兵士らによって掘り出されたヒンズー教徒の遺体は報道陣に公開された。