【9月28日 AFP】(写真追加)ネパールの首都カトマンズ(Kathmandu)で、3歳の女の子が新たな生き神「クマリ(Kumari)」に選ばれた。前任者が思春期を迎えて退任したためで、幼女を生き神としてあがめる古くからの伝統が引き継がれた。

 カトマンズのクマリに選ばれたのはトリシュナ・シャキャ(Trishna Shakya)ちゃん。28日の儀式で正式に任命される。トリシュナちゃんは家族の元を離れてカトマンズのダルバール広場(Durbar Square)にある宮殿で暮らし、特別に任じられた付き人に身の回りの世話をしてもらう。

 新たなクマリは礼装を身に着け、凝った化粧をしてカトマンズをパレードすることになっている。前任のクマリは2008年にやはり3歳で選ばれていた。

 トリシュナちゃんはクマリに任命されると前任者たちと同様、カトマンズの谷に暮らす民族ネワール(Newar)のコミュニティーの一員となる。新居となる宮殿からの外出は、年に13回、特別な祝日のときしか許されない。

 ヒンズー教の女神「タレジュ(Taleju)」の化身とされるクマリは、地に足を着けることが禁じられており、外出時には人に運んでもらう。

 クマリに選ばれるための条件は厳しく、候補者はけがれのない体、獅子のような胸、鹿のようなももなど、多くの身体的特徴を持っていなくてはならない。

 こうした身体的条件をすべて満たしたうえで、さらにいけにえにささげられた水牛を見ても泣かないことによって、勇気もあると証明する必要がある。

 ネワールの伝統はヒンズー教と仏教の要素が融合したもので、その中でも最も重要なクマリはカトマンズの3つの谷、カトマンズ、パタン(Patan)、バクタプル(Bhaktapur)にあった旧王国を象徴する存在となっている。

 この伝統はネパールの王室と歴史的に密接なつながりを持っているが、2008年に立憲君主制が廃止された後も続けられている。一方で、社会からの隔離によって教育の機会が奪われるといった批判も人権活動家から上がっている。(c)AFP