【9月27日 AFP】英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)を前に英国を離れるEU国籍保持者が過去最多となり、移民労働者頼みの外食業界では深刻な人手不足が声高に叫ばれている。

 ブレグジットの是非を問う昨年の国民投票以降の最新データでは、今年3月までの1年間で英国を去ったEU国籍者は3万3000人増の12万2000人に。その大半は中欧出身者だ。

 ピザチェーン店フランコ・マンカ(Franco Manca)の親会社フルハム・ショア(Fulham Shore)は、ブレグジットに伴って導入が見込まれる新たな移民規制により「既に飲食店業界ではEU圏内出身の熟練スタッフの確保に影響が出ている」と主張。同社の全従業員の中で英国籍の従業員はわずか20%しかいないため、EU出身者に留まってもらう説得材料として「数多くの報奨制度」を実施しているという。

 英統計局(ONS)によると、現在、最も人手が足りない職種はサービス業だ。しかも状況は悪化の一途をたどっており、今年6~8月の同業界の人手不足を示す欠員率は前年同期の3.5%を上回る4.3%だった。

 ロンドン(London)西部に展開するビストロチェーン店、シャーロット(Charlotte)のアレックス・レスマン(Alex Wrethman)代表によると、ブレグジットの国民投票以来、ユーロに対してポンドが急落した影響でEU出身者の英国離れが続いているという。

■「EU移民並みに真面目に働く英国人は見つからない」

 レスマン氏は、EU出身者並みに真面目に働く英国人はなかなか見つからないと話す。「皿洗いをするためにベッドから起き上がる英国人を探し出すのは至難の業だ」とレスマン氏。同氏は10代の頃から現在所有するレストランで働き始めた。

 シャーロットの新店舗で料理長を務めるマイク・カーター(Mike Carter)氏は、「私たちは東欧出身者に頼り切っている。英国人シェフはほとんどいない」と語った。「この業界は2~3年で破綻すると思う」

 英政府がEU域内からの低技能労働者の受け入れについては2年までに制限する案を検討しているという機密文書がリークされたことを受け、業界団体である英国ホスピタリティー協会(BHA)は、この案が実際に導入された場合は業界に「壊滅的な事態」を招くと述べている。

 BHAが委託したコンサルティンググループKPMGの調査によると、2019年3月の英国のEU離脱後、EU域内からの移民労働者の流入が止まれば、サービス業界は人材危機と年間6万人の労働者不足に直面するとしている。(c)AFP/Kenza BRYAN