【9月25日 AFP】国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は25日、ロシアが2014年にウクライナから併合したクリミア(Crimea)半島で人権状況が「著しく悪化」しており、拷問を含め、ロシアの当局員による重大な人権侵害が行われていると警告した。

 OHCHRは新たな報告書の中で「重大な人権侵害」の例として「恣意(しい)的な逮捕や身柄拘束、強制失踪、虐待や拷問、また少なくとも1件の裁判なしの死刑」を記録したと述べている。

 OHCHRは報告書でロシアに対し、占領国としての義務を果たし、ロシアの治安部隊やクリミアの自衛組織のメンバーが関与したとみられる拷問、誘拐、殺害のすべてについて捜査するよう要求した。これらに関し、ゼイド・ラアド・アル・フセイン(Zeid Ra'ad Al Hussein)国連人権高等弁務官は声明で、直ちに説明責任と被害者の救済が求められると述べた。

 報告書によると、これまでに収監されたうち数百人が違法にクリミアからロシアの刑務所に移送され、少なくとも3人が拘束中に適切な医療を受けられず死亡した。

 報告書ではさらに、ロシア政府がウクライナ法に代えてロシア法を適用し、市民にロシア国籍の取得を強制していると非難している。公務員はウクライナ国籍を放棄しなければ解雇され、ロシア国籍を取得しないクリミア住民は地元で実質的に外国人として扱われ、「農地の保有や選挙の投票・立候補、宗教団体への登録、集会の開催や公職に就くことができず」、車の登録さえできない状態だという。さらにウクライナ語による教育はほとんど消滅しているとしている。

 OHCHRの調査官はクリミアに入ることを許されていないため、報告はウクライナ本土で行われたインタビューに基づく。(c)AFP