【9月26日 AFP】先週起きた一連の地震で今もがれきの中での捜索活動が続くメキシコ。動揺する人々が震災によるトラウマと向き合えるよう手助けするために、精神衛生の専門家たちが現地入りしている。

 建物が倒壊している首都メキシコ市(Mexico City)では、がれきの下に閉じ込めらたままとなっている人々の家族が、薄れゆく希望にしがみつきながら苦悩しており、これら被災者らの苦悩に救いの手を差し伸べるべく多くの専門家らが災害ボランティアとして志願した。

「家族たちはまだ希望を捨てていない。だが、私たちは、彼らが喪に服すことを前提にカウンセリングを行う準備を始めている」。繁華街ローマ(Roma)地区の倒壊したオフィスビルの前でそう語るのは、「心理学者」と書かれた赤いベストを着たペネロペ・エクサカリアス(Penelope Exzacarias)氏。犠牲者の家族をサポートする彼らの仕事は主に「話を聞くこと」だ。

 救助隊員もサポートの対象だ。隊員の多くは今月19日以降ずっと災害ボランティアとしてがれきと闘っている。「これだけ長い間、休みなしで働き、遺体を目にするのは、たとえ慣れていたとしてもきついことだ」。同じく心理学者と書かれた赤いベストとオレンジのヘルメットを身に着けたロレーナ・ビリャルパンド(Lorena Villalpando)氏が言う。

 人口2000万人の首都圏一帯を襲った今回の地震は、1万人以上が犠牲となった1985年のメキシコ地震と同じ日に起きたため、トラウマはいっそう大きい。直接の被害を受けなかった人でも、トラウマは長引く恐れがあると、精神衛生専門家たちのボランティア隊を組織している「メキシコ精神分析学会(Mexican Psychoanalytical Association)」のアラン・シェフマン・ドイチュ(Alan Schejtman Deutsch)氏は言う。

「現時点では皆、非常に活動的で(犠牲者を)救出しようとしたり、がれきを除去したりしている。だが、経験上、トラウマによるストレスが現れるのは数日後、数週間後だ」。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の最も一般的な症状は「心の中で何度もトラウマを受けた瞬間を思い出すことや、極度の不安、睡眠障害、食欲不振」などだと言う。

 またシェフマン氏は、子どもたちのトラウマのリスクも強調する。「子どもたちはすべての情報をまったく違う形で取り入れるので、傷つき方がさらにひどい。彼らは何が起きているのか、よく理解することができない…彼らにとってさらに理解しにくいのが死だ」

 これに対応するために、ピエロの格好をしたセラピストたちが市内各所で活動している。子どもたちを楽しませることと、トラウマが生じた場合の治療の重要性を親たちに知らせることが目的だという。(c)AFP/Elodie CUZIN