■規制なく無政府状態に

 同国のバニラ景気について、匿名を希望するフランスの貿易業者は「銀行は、バニラ価格の高騰に振り回されていた」と話す。

 バニラ農家を営む40代男性は、「人々にとってお金が何の意味も持たなくなっている。皆、規制はないも同然と考え、無政府状態になってきている」と述べた。

 バニラ価格の暴騰により、バニラ農場の盗難被害も増加した。中には貴重なバニラを警護するために農園内で寝泊りする農家もおり、これまでに数人の窃盗犯が殴打されるなどして撃退されたり当局に拘束されたりしたほか、中には殺害されたケースもあったという。また、盗難を恐れて熟していない状態でバニラの実を収穫せざるを得ない農家も出てきたため、バニラの質が低下する結果にもつながった。

 マダガスカルではバニラの売買がほぼ無統制で行われており、現行の数少ない規定には強制力がほとんどない。バニラの購入者は山地の村を自由に見て回り、直接農家と価格交渉を行ったり、中間業者に価格の見積もりを依頼したりすることもできる。

 バニラは同国の国内総生産(GDP)の5%を占めるが、サバ地域の開発局長は「地元当局で(バニラ売買に)税金を課すところはほとんどない」と語る。

 同地域では飲料水を利用可能な人口は全体の約21%にとどまっており、また電気は86ある自治体のうち6つにしか通っていない状態だ。