【9月25日 AFP】中国スーパーリーグ(1部)の上海申花(Shanghai Shenhua)と前代未聞の契約を結び、世界最高給のサッカー選手となっていたカルロス・テベス(Carlos Tevez)は、上海(Shanghai)の空港に到着した際にはたくさんの花束を受け取り、クラブの青いマフラーを首に巻いてファンの大歓迎を受けた。――それからわずか8か月、テベスは中国政府が二度と繰り返してほしくないと願う「爆買い」の象徴となり、ファンやメディアから「重度のホームシック少年」というニックネームをつけられるなど、これまでと同様にどこにもなじめないという問題を抱えている。

 週給85万ドル(約9500万円)とも報じられているテベスは、キャリアを通じて同じクラブに長くとどまったことがなく、アルゼンチン1部リーグのボカ・ジュニアーズ(Boca Juniors)をはじめ、ブラジル、イングランド、イタリアのクラブを渡り歩き、今年1月には中国に電撃移籍した。上海でも長続きするとは誰も考えてはいなかったものの、テベスに批判的な人間ですら同選手が中国でこれほど早くつまずき、故障や環境の違いに悩まされ、プレーの精彩を欠いていることには驚いている。

 新指揮官の呉金貴(Jingui Wu)監督は先日、元アルゼンチン代表のテベスがプレーするには太り過ぎていると批判したものの、その2日後には同選手が態度を改めて自発的にトレーニング量を増やしているとして、「現在の姿勢なら、これまでと違うテベスが見られることだろう」と述べた。

 16日に行われた上海上港(Shanghai SIPG)とのダービーでは、後半から途中出場したテベスに対し、敵地に乗り込んだ上海申花のファンは静まり返り、一部ではブーイングが聞こえていたという。0-3の劣勢に立たされていた上海申花は、テベスが同リーグ3得点目で1点を返したものの、試合は1-6で大敗した。

■短い蜜月期間、現実味を帯びる退団の可能性

 これまでの成績不振から、ファンの予想ではテベスが11月のシーズン終了時にチームを退団するとみられており、現在リーグの順位が低迷している上海申花が、チームの損失を覚悟の上でシーズン途中で同選手を帰国させても驚きはないと思われる。過去にイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)やマンチェスター・シティ(Manchester City)、イタリア・セリエAのユベントス(Juventus)などを渡り歩いたテベスは、ほとんど公のコメントを出していない。

 現役時代にチェルシー(Chelsea)やトッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur)でプレーしていたグスタボ・ポジェ(Gus Poyet)前監督が先日辞任したばかりの上海申花は、けがの治療を建前として今年8月にテベスの帰国を許可していた。これには同選手が中国に戻ってくることはないという大方の予想に加え、そうなったとしても構わないという声が出ていた。しかし、アルゼンチンでテベスは古巣のボカに復帰することは「非情に難しい」ことであり、「中国人は愚かではない」と発言していたと報じられている。

 テベスにとって上海での蜜月期間は3か月しか続かなかった。4月にはチームが試合をしている最中に上海ディズニーランド(Shanghai Disneyland)へ行っていたことが発覚し、ファンを激怒させた。これに対して、テベスは自分がけがを抱えている状態で、休日に家族と時間を過ごしていただけだと反論した。

 ポジェ前監督は同選手の不調の要因について、中国最大の国際都市である上海での生活に慣れるのに苦労しているという見解を示し、アルゼンチン紙ラ・ナシオン(La Nacion)に対して「言葉が複雑で、食事に関しても大勢が苦労しているように、テベスもそのことに悩んでいる。最初はほとんど何も食べられなかったようだ。(チームメートのフレディ・)グアリン(Fredy Guarin)や(ジョバンニ・)モレノ(Giovanni Moreno)らと一緒にバーベキューをしたよ。中華料理を避ける必要があったんだ」と語った。

 吴監督は、テベスが遅ればせながら調子を上げて、不振に陥ったチームの救世主になることを期待しており、「彼の経験と実力は疑う余地がない。このリーグでそれを証明する必要はない」とすると、「ここに来てから環境への適応にある程度問題があったようだが、彼の加入によって上海申花にはこれまで以上の注目が集まっている」と語った。(c)AFP/Peter STEBBINGS