【10月1日 AFP】ベトナム・カントー(Can Tho)にあるカイラン(Cai Rang)マーケット。全長2キロに及ぶこの水上マーケットには、かつてのにぎわいはほとんどない。地元の案内所によると、2005年に営業していた船は550隻だったが、現在は約300隻に減少したという。

 ここ10年でメコンデルタ(Mekong Delta)地域の経済が急速に発展し、工業や建設業で57万人近い雇用を生み出し、多くの人々が貧困から脱した。しかし、そのあおりを食う形となったのがカイランマーケットだ。

 グエン・ティ・ホン・トイ(Nguyen Thi Hong Tuoi)さん(34)は母親や祖母と同じく幼い頃から水上で働き続け、そこそこの稼ぎを得てきた。しかし、娘に家業を継がせようとは考えていないという。

「娘には将来、陸の上で暮らしてもらおうと思っている。そうすればもっと勉強だってできるし、まっとうな仕事にも就ける」。袋詰めされたタピオカが積まれたボート内のハンモックで休む母親を尻目にトイさんは話した。

 現在、9300万人のベトナム人口の半数以上は30歳以下。そうした若者たちにとって、仕事を得るために発展の著しい都市に移住するのは共通した願いだ。

 水上マーケットが観光スポットとして広く認知されるようになったことで、政府は昨年、カイランを国家遺産に指定した。

 水上マーケットの行商で26年間、生計を立ててきたリー・ハン(Ly Hung)さんは、観光客の存在は、この伝統的な生活を維持するうえで役立っているとして、こう言った。

「観光なしでは水上マーケットは消えてしまう」(c)AFP/Jenny VAUGHAN