【9月17日 AFP】イエメンで昨年イスラム過激派が起こした襲撃事件のさなかに拉致されていたローマ・カトリック教会のインド人神父が16日、自身の解放に尽力した全関係者に謝意を表し、拉致実行犯にさえも危害を加えないでいてくれたとして感謝の言葉を述べた。

 1年半ぶりに解放されたトーマス・ウズナリル(Thomas Uzhunnalil)神父(59)は当局の介入によってオマーンで無事解放された後、イタリアの首都ローマ(Rome)で記者会見を行い、「主なる神の名において、私は拉致を行った人々にも感謝します。彼らは私のことを理解してくれ、危害を加えませんでした。これも神の介入です」と感情を込めて語った。「あらゆる敵に対する最上の武器は愛と祈りです」

 ウズナリル神父は2016年3月、イエメン南部アデン(Aden)で発生した教会が運営する介護施設に対する襲撃事件のさなかに拉致された。この事件では修道女4人を含む16人が死亡した。

 オマーン政府は12日、イエメンの関係者らと協力してウズナリル神父解放を仲介したと発表した。ウズナリル神父が解放前に最後に姿を見せたのは2016年12月にインターネットに投稿された動画の中だった。その際ウズナリル神父はインドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相とローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王に自身の解放を訴えていた。

 ローマ法王庁(バチカン)は、ウズナリル神父は健康診断を受けた後、ローマで療養することになっていると発表した。糖尿病を患っている神父は、厳しい試練のさなかに30キロ体重を落とした。

 ウズナリル神父は13日、フランシスコ法王と面会した。法王はアデンの襲撃事件について「無分別で極悪非道」と述べていた。

 イエメン当局はアデンの襲撃事件を行ったのはイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」だとしているが、これまでにウズナリル神父拉致事件の犯行声明を出した組織は一つもない。(c)AFP